スーパーの鮮魚コーナーで、あの大きな羽(胸びれ)を持った立派な「トビウオ」を見かけたことはありませんか?
「珍しいから食べてみたいけど、どうやって料理すればいいか分からない…」「小骨が多そうだし、パサパサしそう…」と、買うのをためらってしまう方も多いと思います。
確かに、空を飛ぶために極限まで進化したトビウオは、脂が少なく小骨が多いという特徴を持っています。でも安心してください!魚屋である私が普段家で実践している「ちょっとしたプロのコツ」を使えば、厄介な小骨は全く気にならなくなり、立派な羽から頭まで丸ごと食べられる極上のごちそうに大化けするんです。
この記事では、トビウオを最高に美味しく食べるための「姿唐揚げ」「塩焼き」「自家製干物」の3つのレシピを、失敗しないコツや写真と共に徹底的に解説します。
この記事で分かること
- 油跳ねゼロ!フライパンで作る「羽までサクサク姿唐揚げ」
- 小骨が消える魔法の「骨切りテクニック(塩焼き)」
- あご出汁の旨味を凝縮!冷蔵庫で作る「自家製干物」とグリルの焼き方
- スーパーの鮮魚コーナーで下処理を頼む時の裏事情

食べ方①:羽までサクサク!フライパンで作る「姿唐揚げ」
トビウオの唐揚げは屋久島名物としても知られています。本場の屋久島では、エラと内臓を取って丸ごと揚げているか、火が通りやすいように背中側に中骨に沿って2本切れ目を入れているお店が多いです。
ただ、家庭で丸ごとの唐揚げを作ろうとすると、幅が広い鍋と、トビウオの体厚+羽を広げた分の「深さ」が必要になります。そんな大きな鍋を持っている家庭は少なく、我が家にも一応あるにはあるのですが、揚げ油が大量に必要になってしまいますよね。
そこで家庭での唐揚げに絶対おすすめなのが、「腹開きにして頭も割ってしまう」方法です。
失敗しない秘訣は「腹開き」と下処理

腹開きにして頭を割ることで厚みが薄くなり、フライパンに引いた少ない油でもトビウオ全体が油に浸かり、均一に揚げることができます。
さらに、開くことで小骨にもしっかりと熱が入るので、食べるときは小骨がほとんど気にならず、腹骨もポリポリと食べられます。
【下処理のポイント】
腹から開いてエラと内臓をとったら、背骨の周りにある血合いの部分を綺麗に掃除してください。血合いが残っていると激しい油跳ねの原因になります。
羽を広げて片栗粉をまぶす

下処理が終わったら、全体に片栗粉をまんべんなくまぶします。この時、写真のように指で羽(胸びれ)をピンと広げながら、羽の間にもしっかりと粉をはたき込むのが美しく仕上げるコツです。
サカシュン流!140〜160℃の「低温フライ」の極意

さあ、いよいよ揚げていきます。ここで魚屋から全力でお伝えしたいのが、「揚げ物は140℃〜160℃の『低温』で揚げるべし!」というサカシュン流のルールです。
私はトビウオの唐揚げだけでなく、他の魚や天ぷら、さらには鶏の唐揚げ、とんかつ等すべての揚げ物を140~160℃の低温で統一しています。我が家はIHで揚げ物温度設定があるので基本140℃がメインです。食材によって火が入りやすいものでも160℃までしか温度を上げません。
家庭でやる揚げ物で180℃を推奨しているものが多いのですが、経験上、高温をおすすめしないのには明確な理由があります。
そのため家庭調理では低温140度~160度が断然おススメです!低温でじっくり食材の中を蒸らしつつ揚げているため水分が蒸発しづらく、一番の難題である「揚げ時間」を気にする必要がありません。唐揚げやフライなら表面がキツネ色になった時点(約10分~15分)で、ほぼ確実に中まで火が通っています。天ぷらに関しても、衣がカリッとしていたらOKです。
完成!極上の姿唐揚げといちばん美味しい食べ方

カリッとジューシーに揚げたトビウオの唐揚げに塩を少しかけて、レモンを絞ってかぶりつけばその美味しさに感動しますよ!
羽に関してはスナック感覚で、我が家の娘2人も「美味しい!」と喜んで食べていました。食べるときは、最初にヒレをちぎっておくと身が食べやすいです。
トビウオは中骨がかなり硬いです。ただ、私の魚愛はちょっと変態の域に達しておりまして、「せっかくのトビウオ、1ミリたりとも無駄にしたくない!」という謎の執念から中骨までバリバリと噛み砕いて食べちゃいますが(笑)、皆さんが唯一残す部分はそこだけです!
頭も半分に割ってあるので、ぜひ頭からガブリといってみてください。一番おすすめの食べ方は、お箸で上品につまむのではなく、お肉の「スペアリブ」のように両手で持って、中骨のまわりの身に直接野性的にかぶりつくスタイル!これが一番美味しいんですよ。
食べ方②:小骨が消える魔法!「ふっくら塩焼き(骨切り)」
次は定番の「塩焼き」です。塩焼きもそのまま塩を振って焼くのではなく、ちょっとしたひと手間でフワッと仕上がり、小骨が多いトビウオも全く気にせずに食べられるようになりますよ。
下処理として羽と尾びれを落とす

骨切りの前に下処理として、焦げやすい羽(胸びれ)と尾びれをキッチンバサミや包丁で切り落とします。(※基本スーパーに売っている塩焼き用などは、すでに取ってあることが多いかと思います)
小骨を断ち切る「骨切り」テクニック

そしてここが最大のポイント!画像のように、身の表面に数ミリ間隔で細かく切り込みを入れて「骨切り」をしておきます。
トビウオの中骨は非常に硬いのですが、身の中に入っている小骨は意外とフカフカしていてそこまで気になりません。そこにこの骨切りを加えることで、小骨が断ち切られてグンと食べやすくなります。この方法なら子供もさらに食べやすくなるので、魚好きへの第一歩になるかもしれませんよ!
※この骨切りテクニックは、ニシンやサンマなど小骨の多い他の魚にも有効な方法です。

あとは塩を振って香ばしく焼き上げれば、ふっくらとした身が味わえる絶品の塩焼きの完成です。
食べ方③:旨味が爆発!冷蔵庫で作る「自家製干物」
最後に是非作って欲しいのが「自家製の干物」です。
なぜ干物がおススメかというと、トビウオはとにかく強烈な旨味をもっている魚だからです。高級な「あご出汁」の原料になることからも分かる通り、全身がアミノ酸の塊。干物にすることでその旨味が極限まで凝縮されて、最高に美味しい極上のおかずになります!
「家で干物なんて作れるの?」と思うかもしれませんが、冷蔵庫を使えば誰でも簡単に作れます。なぜ手間をかけてまで干物を自作するのか?それには市販品にはない大きな魅力があるからです。
材料と道具
- トビウオ: お好みの量(腹開き、または背開きにする)
- 塩水(塩分濃度4%): 水1000ml (1L) に対して 塩40g
- 道具: ボウル、バット、網、キッチンペーパー
1. 塩水に漬ける
ボウルに水と塩を入れてよく混ぜて完全に溶かします。そこに下処理したトビウオを入れ、約1時間30分漬け込みます。

この「4%の塩水に1時間半」という塩梅が、しょっぱすぎず、しかし魚の旨味をしっかり引き出す絶妙なバランスです。ぜひこの通りに試してみてください。(※魚の大きさや種類、脂の乗り方によって漬け込む塩分濃度は変わります)
2. 冷蔵庫で干す(乾燥させる)
これが家庭で干物を作る最大のコツです。特別な道具は要りません。
- 塩水からトビウオを取り出し、キッチンペーパーで表面の水分を優しく、しかし徹底的に拭き取ります。
- バットの上に網を乗せ、そこにトビウオの皮目を下にして置きます。
- ラップをかけずに、そのまま冷蔵庫に入れ、丸1日(約24時間)置きます。

冷蔵庫の中は乾燥しているため、ゆっくりと魚の水分が抜けて旨味が凝縮されます。天日干しのように天候を気にする必要も、虫の心配もありません。1日後、表面が適度に乾いていれば美しい干物の完成です!
美味しい焼き方(グリルの場合)

完成した干物を、魚焼きグリルで焼いていきます。ご家庭のグリルの種類によって、焼き方のコツが少し変わります。
【両面焼きグリルの場合】
- 皮目を下(=身を上)にして網に直接置きます。
- 中火でじっくりと焼きます。余分な水分と脂が下に落ちることで、皮目がパリッと香ばしく仕上がります。
- 目安は約15分〜20分。全体にこんがりと焼き色がついたら最高のタイミングです。
【片面焼きグリルの場合】
- まず皮目から中火でじっくり焼きます。(約10分〜12分)
- 皮目に美味しそうな焦げ色がついたら、裏返して身の側を焼きます。(約5分〜8分)
- 両面がこんがりと焼けたら完成です。
実食!あご出汁の旨味をそのまま味わう

焼き上がった干物は、香ばしい香りが食欲をそそります。一口食べると、市販品にはない身のふっくら感に驚き、噛むほどにトビウオ本来の強烈な旨味が口の中に広がりますよ!
じっくり焼いたことで旨味が詰まったヒレもパリパリと香ばしく、これが自家製干物の醍醐味です。
まとめ:スーパーでトビウオを見つけたら迷わず買おう!
「骨が多くて調理が難しそう…」と思われがちなトビウオですが、腹開きにして低温でじっくり揚げる「姿唐揚げ」、骨切りをしてフワッと焼き上げる「塩焼き」、そして旨味を凝縮させる「自家製干物」にすれば、驚くほど美味しい極上の食卓に変わります。
脂肪分が少なく、良質なアミノ酸がたっぷり詰まったトビウオは、育ち盛りのお子様から健康を気にする大人まで、家族みんなに嬉しい優秀な食材です。
次にスーパーの鮮魚コーナーであの立派な姿を見かけたら、ぜひためらわずにカゴに入れて、今夜は思い切って調理してみてくださいね。羽のサクサク感と、身のジューシーな旨味にきっと感動するはずです!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。サカシュンでした!