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ニシンが「まずい・臭い」は誤解!旬の美味しい食べ方と栄養を解説

スーパーの鮮魚コーナーで立派なニシンを見かけても、「ニシンって小骨が多いし、なんとなく臭そう…」「昔食べてまずかった記憶がある」といって、手を伸ばさずに通り過ぎてしまうことはありませんか?

その気持ち、実は痛いほどよく分かります。

私も魚にハマる前は、ニシンといえば「身欠きニシンの独特なクセ」や「骨が喉に刺さる魚」というイメージしかありませんでした。

しかし、断言させてください。

その「まずい・臭い」という評価は、ニシンそのもののポテンシャルではなく、「鮮度管理の難しさ」や「調理前の下処理不足」による誤解がほとんどなのです。

この記事で分かること

  • ニシンが「臭い」と言われてしまう科学的なメカニズムと誤解の正体
  • 家庭にある「あるもの」を使って臭みを完全に消し去る驚きの下処理術
  • 小骨のストレスをゼロにする、プロ直伝の簡単な「骨切り」テクニック
  • 脂が乗り切った「本当の旬」のニシンを見極めるための目利きポイント

正しい知識とちょっとしたコツさえ掴めば、ニシンは高級魚にも引けを取らない、とろけるような脂と濃厚な旨味を持った最高の食材に変わります。この記事では、私が実際に試行錯誤してたどり着いた「ニシンを最高に美味しく食べるための全知識」を、包み隠さずシェアします。

ニシンはまずいや臭いと言われる理由

なぜ、アジやサバと同じ青魚であるにもかかわらず、ニシンだけがこれほどまでに「臭い」「まずい」という不名誉なレッテルを貼られてしまうのでしょうか。そこには、ニシン特有の脂質の性質や、日本の食文化における加工品の歴史、そして私たちの味覚の感じ方が深く関係しています。まずは、敵を知ることから始めましょう。

独特な臭いの原因は脂質の酸化にある

ニシンが「臭い」と言われる最大の要因は、魚体に含まれる「脂質の酸化」にあります。ニシンは「青魚の王様」と呼ばれるほど、筋肉中に豊富な脂質を蓄えている魚です。

空気と触れることで発生する「過酸化脂質」

この脂質には、私たちの健康に有益な「不飽和脂肪酸(DHAやEPA)」がたっぷりと含まれているのですが、これらは化学的に非常に不安定で、空気に触れるとすぐに酸素と結びついて酸化してしまうという弱点を持っています。酸化した脂質は「過酸化脂質」へと変化し、さらに分解されることでアルデヒド類などの揮発性成分を生み出します。

これが、いわゆる「古くなった油の臭い」「枯草のような臭い」「段ボール臭」と表現される独特の劣化臭の正体です。特に、保存食として流通している「身欠きニシン(本乾・ソフト)」は、製造過程で長時間空気にさらされながら乾燥するため、どうしてもこの酸化臭が発生しやすくなります。

「まずい」と感じる味覚の正体

私たちがニシンを食べて「まずい」と感じる時、その味覚的な根拠の多くは、この酸化した脂がもたらす「えぐみ」や「渋み」です。舌に残るような不快な脂っこさは、新鮮なニシンの脂の甘みとは全く別物です。つまり、多くの人が「ニシンの味」だと思っているものは、実は「劣化した脂の味」である可能性が非常に高いのです。

【生のニシンの場合】
生のニシンの場合は、脂の酸化に加えて「酵素による自己消化」が臭いの原因になります。ニシンは内臓の消化酵素が非常に強く、死後すぐに内臓から分解が始まり、トリメチルアミンという生臭さ成分を発生させます。これが「生臭い」と言われる主な原因です。

生態や種類と数の子との関係

ニシンは、ニシン目ニシン科に属する寒流系の回遊魚です。冷たい海を好み、日本の食文化においては、春の訪れを告げる魚として「春告魚(はるつげう)」という美しい別名でも親しまれてきました。

「カド」の子だから「カズノコ」

ニシンと切っても切れない関係にあるのが、お正月の縁起物である「数の子」です。実は、ニシンの別名を地方によっては「カド」と呼びます。「カドの子」が訛って「カズノコ」になったという説が有力です。

名称特徴市場での扱い
ニシン(親)身は脂が乗って美味だが、小骨が多く安価で流通する傾向がある。大衆魚・惣菜魚
数の子(卵)独特のプチプチとした食感と黄金色の見た目が特徴。高級食材・贈答品

面白いことに、日本では親であるニシン本体よりも、卵である数の子の方が圧倒的に高値で取引されるという逆転現象が起きています。そのため、海外から輸入されるニシンの多くは「数の子を採るため」に漁獲され、身の方は二の次…という扱いを受けてきた歴史も、ニシンの食味評価が上がらない一因かもしれません。

ニシンの卵である『数の子』についても、とびっこやバラ子との違い、使い分けのコツをこちらの記事で特集しています。

脂が乗って最も美味しい旬の時期

「ニシンはパサパサしていて美味しくない」と思っている方は、もしかしたら食べる時期(旬)を間違えているかもしれません。ニシンを美味しく食べるためには、「春ニシン」と「秋ニシン」の違いを理解することが極めて重要です。

春ニシン(3月〜5月頃):数の子を楽しむ季節

産卵のために沿岸に近づいてくる時期のニシンです。メスはお腹パンパンに数の子を抱えており、オスは白子を持っています。この時期の醍醐味は、なんといってもこれら卵や白子の美味しさです。しかし、親魚の体内の栄養分が卵や白子に行き渡っているため、身そのものの脂の乗りは控えめで、少しさっぱりとした(悪く言えばパサつきがちな)味わいになります。

秋〜冬ニシン(10月〜12月頃):身の脂を楽しむ季節

私が「まずい」というイメージを払拭するためにぜひ食べていただきたいのが、この時期のニシンです。産卵を終えて北の海を回遊し、餌をたっぷりと食べて脂を蓄えた状態です。この時期のニシンは、包丁を入れると脂で刃が白く曇るほど「トロトロ」の状態になります。刺身にすればマグロのトロにも負けない濃厚さがあり、塩焼きにすれば脂が滴り落ちて炭が燃え上がるほどです。

スーパーで選ぶ際は、お腹の張り具合だけでなく、背中側が厚く盛り上がっているものを選ぶのが、脂乗りが良い個体を見抜くコツです。

世界一臭い缶詰とは全く別物である

「ニシン 臭い」と検索すると、必ず関連情報として出てくるのが、スウェーデンの伝統食品「シュールストレミング」です。テレビのバラエティ番組などで「世界一臭い食べ物」として紹介され、その強烈なリアクション映像が印象に残っている方も多いでしょう。

発酵と腐敗の境界線

しかし、誤解しないでいただきたいのは、私たちが普段食べるニシン料理とシュールストレミングは、製造プロセスも臭いの原理も全くの別物だということです。

  • 一般的なニシン(生・干物): 鮮度低下や酸化による臭い(トリメチルアミン、アルデヒド類)。基本的に防ぐべき「劣化臭」。
  • シュールストレミング: 塩分濃度を低くして缶詰にし、嫌気性細菌(Haloanaerobium属)によって意図的に発酵させたもの。発生するのはプロピオン酸、酪酸、硫化水素などの「発酵臭」。

シュールストレミングは、缶の中で発酵が進んでガスが発生し、缶がパンパンに膨れ上がるほどの状態になります。これは特殊な食文化による加工品であり、スーパーで売っているニシンを買ってきても、あのような臭いがすることは100%ありませんので、安心してください。

豊富な栄養素と健康効果を解説

「臭い」「骨が多い」と敬遠するにはあまりにも惜しいのが、ニシンが持つ素晴らしい栄養価です。サプリメントでわざわざ摂取する人も多い成分が、ニシンには天然の状態でたっぷりと含まれています。

DHA・EPAの含有量はトップクラス

ニシンの脂質には、オメガ3脂肪酸であるDHA(ドコサヘキサエン酸)EPA(エイコサペンタエン酸)が非常に豊富に含まれています。これらは体内で合成することができない必須脂肪酸であり、以下のような効果が期待されています。

  • EPA: 血液をサラサラにし、血栓の予防や中性脂肪の低下をサポートする。
  • DHA: 脳や神経組織の発育・機能維持に働きかけ、記憶力の維持などを助ける。

文部科学省が公表している「日本食品標準成分表」を見ても、ニシンの脂肪酸組成におけるこれら成分の優秀さは際立っています。特に成長期のお子様や、生活習慣が気になる世代の方には、積極的に摂っていただきたい食材なのです。

(出典:文部科学省『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』

青魚の栄養については、青魚・白身魚・赤身魚の違いを解説した記事でも詳しく紹介しています。

ニシンがまずいや臭いを解決する調理法

原因がわかれば、解決策は明確です。ここからは、「臭い・まずい」と言われる要素を科学的に取り除き、ニシンの旨味だけを抽出する実践的な調理テクニックをご紹介します。これを実践すれば、食卓のニシン料理が「仕方なく食べるおかず」から「奪い合って食べるご馳走」に変わりますよ。

米のとぎ汁を使った効果的な臭み取り

特に「身欠きニシン」を戻す時や、少し鮮度が気になる生のニシンを使う時に、魔法のような効果を発揮するのが「米のとぎ汁」です。「水で洗うのと何が違うの?」と思われるかもしれませんが、これにはちゃんとした化学的な理由があります。

とぎ汁が臭いを消すメカニズム

  1. 吸着作用: 米のとぎ汁に含まれるデンプンやタンパク質の微細な粒子(コロイド粒子)が、表面積の広さを活かして、魚から溶け出した臭み成分や酸化した油分を物理的に吸着・抱き込んでくれます。
  2. 界面活性作用: 米ぬかに含まれる成分が天然の洗剤のような働き(界面活性作用)をし、魚の表面についた脂汚れを浮き上がらせてくれます。
  3. 酵素の働き: 米ぬかに含まれる酵素が、酸化した過酸化脂質の分解を助けるとも言われています。

【サカシュン流・最強の戻し方】

用意するのは、一番最初に出る「濃いめのとぎ汁」です。

  1. ニシンがしっかり浸かる容器にとぎ汁を入れます。
  2. ソフト身欠きニシンなら一晩、本乾なら2〜3日冷蔵庫で浸け置きます。(※本乾の場合は毎日とぎ汁を交換してください)
  3. 取り出したら、指の腹を使って表面のぬめりや浮いた脂を流水で丁寧に洗い流します。特に腹の中の黒い膜や血合いは臭みの元凶なので、ここで完全に取り除きます。

この工程を経たニシンは、臭みが抜けるだけでなく、身がふっくらと白く蘇ります。もし手元に米のとぎ汁がない場合は、水500ccに対して生米大さじ2杯ほどを直接入れて一緒に浸け込むだけでも、似たような効果が得られますよ。

生姜や梅干しで煮付けの臭いを消す

ニシンの定番料理といえば「煮付け」や「昆布巻き」ですが、醤油で煮るだけでは、ニシンの強い個性に負けてしまうことがあります。そこで活用したいのが、先人の知恵である「生姜」と「梅干し」のパワーです。

香りのマスキングと酸の力

生姜に含まれる「ジンゲロン」や「ショウガオール」といった芳香成分には、魚の生臭さを感覚的に打ち消す強力なマスキング効果があります。煮汁には薄切りにした生姜をたっぷりと入れ、仕上げに針生姜を添えることで、清涼感が加わります。

また、梅干しを一緒に煮込むのも非常に理にかなっています。梅干しの酸味(クエン酸など)が、脂っこいニシンの味を引き締め、中和してくれるのです。さらに、酸性の環境で煮込むことで、魚の骨に含まれるカルシウムが溶け出しやすくなり、小骨が柔らかくなるという嬉しい副産物もあります。

塩焼きで余分な脂と臭いを落とす

「脂っこいのが苦手」という方にこそ試していただきたいのが、シンプルな「塩焼き」です。実は、焼くという調理法は、最も効果的な「脂質コントロール術」でもあります。

メイラード反応を味方につける

ニシンを直火やグリルの網で焼くと、皮の下にある脂肪分が高温で液状化し、ポタポタと滴り落ちます。これにより、酸化しやすい余分な脂が物理的に除去されます。そして、皮やタンパク質が焼けることで、アミノ酸と糖が反応して褐色に色づき、香ばしい香りを放つ「メイラード反応」が起こります。

この香ばしさは、魚の生臭さを上書きするほどの食欲増進効果を持っています。焼き上がったニシンにレモンやスダチを絞れば、柑橘の香りと酸味が残った脂をさらにさっぱりとさせ、箸が止まらない美味しさになります。

小骨が多い問題は骨切り調理で解決する

味の問題をクリアしても、最後に立ちはだかるのが「骨問題」です。ニシンには、背骨や肋骨とは別に、身の中に埋没している「肌骨(小骨)」が無数に存在します。これがいちいち口に触るのが嫌だ、という声は非常に多いです。

ハモの技術を家庭で応用する

この問題を一発で解決するのが、京都のハモ料理でおなじみの「骨切り」です。「そんな職人技、無理!」と諦めないでください。ニシンの骨切りは、ハモほど繊細である必要はありません。

【簡単骨切りのやり方】
三枚におろして腹骨をすいたニシンの身に対し、皮を切らないギリギリのところまで、包丁で3〜5ミリ間隔にザクザクと切り込みを入れていくだけです。「ジョリッ、ジョリッ」と骨が切れる音がすれば成功です。

骨切りをしたニシンを、フライや唐揚げにして高温で揚げると、切断された細かい骨が熱でさらに脆くなり、衣のサクサク感と一体化して、口の中で全く気にならなくなります。驚くほどフワフワの食感に変わり、「今まで骨を避けていたのは何だったんだ」と思うはずです。

私が実際に試して感動した、【サカシュン流】ニシンの骨切りフライの詳しいレシピと実食レビューは、こちらの記事で写真付きで解説しています!

まとめ:ニシンがまずいや臭いという評価は間違い

ここまで読んでいただいた方なら、もうお分かりでしょう。ニシンがまずいや臭いと誤解される裏にあるのは、ニシンという魚の欠点ではなく、「扱い方や下処理不足」です。

ニシンは、酸化しやすいデリケートな脂を持っていますが、それは裏を返せば、DHAやEPAといった最高品質の脂をたっぷりと持っている証拠でもあります。「鮮度の良いものを選ぶ」「旬を知る」「米のとぎ汁で戻す」「骨切りをする」といった、理にかなったアプローチさえ行えば、ニシンは私たちの期待を遥かに超える感動的な美味しさを提供してくれます。

スーパーでニシンを見かけたら、ぜひ「臭い魚」という色眼鏡を外し、「磨けば光る原石」だと思って手に取ってみてください。今回ご紹介した方法で調理されたニシンは、きっとあなたの食卓の新しい主役になるはずです。

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