スーパーの鮮魚コーナーに並ぶエビを見て、「どっちを買えばいいんだろう?」と迷った経験はありませんか?
一見すると似ているようでも、実はこの2つ、性格が全く異なるエビなんです。
「こっちの方が安いけど、味はどうなんだろう?」「高い方を奮発したけど、思ったより硬かった…」なんて失敗は、もう今日で終わりにしましょう。
それぞれの特徴を知れば、料理の仕上がりは劇的に変わります。
この記事で分かること
- バナメイエビとブラックタイガーの決定的な違いと見分け方
- 料理のプロが実践している食感と甘味を活かした使い分け術
- 安いバナメイエビを高級店のような味わいに変える下処理の魔法
- 価格差の理由や名前の由来など知って得するエビの雑学
バナメイエビとブラックタイガーの違いを徹底比較
まずは、バナメイエビとブラックタイガー、それぞれの基本的なプロフィールを深掘りしていきましょう。「なんとなく色が違う」程度に思っている方も多いかもしれませんが、実は生物学的にも、そして調理科学的にも、全く別物と言っていいほどの違いがあります。この違いを理解することが、スーパーでの賢い選択の第一歩です。
生鮮時の見た目と加熱後の赤色

パックに入っている状態、つまり生鮮時の見た目には、誰でも一瞬で見分けられる決定的な違いがあります。スーパーの陳列棚で迷わないためにも、まずはこの外見的特徴をしっかり押さえておきましょう。
そして、料理をする上で最も面白いのが「加熱後の変化」です。「黒いエビだと料理の色が悪くなるんじゃ…」と心配する必要は全くありません。エビの殻や表皮には「アスタキサンチン」という赤い色素が含まれており、生の状態ではタンパク質と結合して青黒い色をしています。しかし、加熱することによってこの結合が解け、鮮やかな赤色が表に出てくるのです。
特にブラックタイガーは、元々の色素量が多いため、加熱すると非常に濃く、深みのある鮮やかな赤色に発色します。この「紅白」のコントラストが美しいため、おせち料理や結婚式の料理など、見た目の豪華さが求められる「ハレの日」の食材として重宝されてきました。対してバナメイエビも綺麗な赤色にはなりますが、ブラックタイガーに比べるとやや明るく、優しいオレンジがかった赤色になる傾向があります。この色の違いも、料理のプレゼンテーションを考える上で重要な要素となります。
どっちが美味しい?食感と甘味
「結局、味はどうなの?どっちが美味しいの?」というのが、皆さん一番気になるところですよね。結論から申し上げますと、これは「優劣」ではなく、完全に「好みの問題」であり、目指す料理の方向性によって正解が変わります。それぞれの持ち味が正反対と言っても過言ではないからです。
| 品種 | 食感の特徴(テクスチャー) | 味の特徴(フレーバー) |
|---|---|---|
| ブラックタイガー | 繊維が太く、弾力が非常に強い 「プリッ!ガシッ!ブリッ!」 | エビ特有の旨味と風味が濃厚 |
| バナメイエビ | 水分が多く、身が柔らかい 「フワッ!トロッ!プリッ!」 | 癖がなく、甘みが非常に強い |
ブラックタイガーの最大の特徴は、なんといってもその強靭な「弾力」です。筋肉の繊維が太く密に詰まっているため、噛んだ瞬間に歯を押し返すような強い反発力があります。「プリプリ」という表現を超えて、「ブリンブリン」とした力強い食感と言った方が近いかもしれません。加熱しても身が縮みにくく、口の中でしっかりとした存在感を主張します。「今日はガッツリとエビを食べたい!」という時には、この満足感がたまりません。
対するバナメイエビは、身質が非常に「ソフト」です。水分量が多く、繊維が細かいため、口に入れるとフワッとほどけるような柔らかさがあります。これを「水っぽい」とネガティブに捉える方もいますが、それは誤解です。この水分こそがジューシーさの源であり、加熱しすぎても硬くなりにくいというメリットでもあります。そして特筆すべきは「甘みの強さ」です。
バナメイエビには、グリシンやアラニンといった甘味系のアミノ酸が豊富に含まれており、ブラックタイガーよりも直接的な甘さを感じやすいのが特徴です。この優しい甘みと柔らかさは、小さなお子様やご高齢の方にも非常に食べやすく、万人に愛される味わいと言えるでしょう。
値段の差はなぜ?スーパーの相場

スーパーで価格を見ると、ほぼ間違いなく「バナメイエビ」の方が安く、「ブラックタイガー」の方が高く設定されています。特売日にはバナメイエビがブラックタイガーの半額近い値段で売られていることも珍しくありません。これを見ると、「バナメイは安物で質が悪いのでは?」「ブラックタイガーの方が高級で美味しいに決まっている」と勘違いしてしまいそうですが、それは大きな間違いです。
この価格差の正体は、味の優劣ではなく、ズバリ「養殖効率(生産性)」の違いにあります。
つまり、バナメイエビが安いのは「質が悪いから」ではなく、「一度にたくさん作れる技術が確立されたから」という、純粋に産業的な理由なのです。現代の技術が生んだ「家計の味方」であり、品質に関してはブラックタイガーに勝るとも劣らないポテンシャルを持っています。
【雑学】バナメイの名前の由来は?
ちょっとここでブレイクタイム。そもそも「バナメイ」って、一度聞いたら忘れられない不思議な響きだと思いませんか?「ブラックタイガー」はいかにも強そうで分かりやすいですが、バナメイには一体どんな意味が隠されているのでしょうか。
「南国のフルーツ、バナナと関係があるのかな?」なんて想像した方もいるかもしれませんが、実は全く関係ありません。正解は、なんと人の名前なんです。
バナメイエビの学名は Litopenaeus vannamei (リトペナエウス・バナメイ)と言います。この種小名の部分である「vannamei」は、20世紀初頭に活躍したアメリカの著名な動物学者、ウィラード・ヴァン・ネーム(Willard Van Name)博士に献名されたものなのです。彼のエビ類の研究への功績を称えて、その名が刻まれました。「ヴァン・ネームさんのエビ」が訛って「バナメイ」になったと考えると、スーパーで見かけた時にちょっと親近感が湧いてきませんか?
ちなみに、ブラックタイガーの和名は「ウシエビ(牛海老)」と言います。これにも面白い由来があり、その大きさが牛のように立派であること、そして体色が黒っぽく牛に似ていることから名付けられたと言われています(諸説あります)。英語圏ではその縞模様から「Giant Tiger Prawn(ジャイアント・タイガー・プロウン)」と呼ばれ、まさに強さを象徴する名前が付けられています。飲み会や食卓でエビ料理が出た時に、こんな豆知識を披露すると少し盛り上がるかもしれませんね。
大きさと殻の厚さによる歩留まり
料理をする上で地味に大切、でもお財布事情には直結するのが「歩留まり(ぶどまり)」です。歩留まりとは、購入した重量に対して、実際に食べられる部分(可食部)がどれくらいあるかという割合のことです。ここでも両者には明確な違いがあります。
ブラックタイガーは、身を守るために殻が非常に分厚く頑丈にできています。これは加熱時の身の縮みを防ぐ「鎧」の役割を果たしてくれる頼もしい存在ですが、一方で「殻の重さ」が全体重量のかなりの割合を占めているということでもあります。1kgのブラックタイガーを買っても、殻を剥くと実際に食べられる量は意外と減ってしまうのです。また、殻が硬いため、素手で剥くのには少しコツと力が必要で、指先が痛くなることもあります。
一方、バナメイエビは殻が非常に薄くて柔らかいです。手で簡単にペリペリと剥くことができ、調理の手間(ストレス)が格段に少ないのが嬉しいポイントです。殻自体が軽いため、買った重量のほとんどが身として食べられます。つまり、重量に対する食べられる部分の割合(歩留まり)は、バナメイエビの方が圧倒的に優秀と言えるでしょう。ゴミも少なくて済むので、家庭料理での使い勝手はバナメイエビに軍配が上がります。
カロリーと栄養価は健康的な食材
エビは全般的に「高タンパク・低脂質」な超優良食材として知られていますが、バナメイエビもブラックタイガーも、この点においてはどちらも非常に優秀です。筋肉を作りたいアスリートの方や、健康的に痩せたいダイエット中の方には、鶏のささみと並ぶ最高のパートナーとなります。
具体的な数字を見てみましょう。バナメイエビ(生)のカロリーは100gあたり約82kcal前後と非常に低く、脂質はわずか0.6g程度しか含まれていません。それでありながら、体の材料となるタンパク質は約19.6gもしっかりと摂取できます。これは、カロリーを抑えながら満腹感を得て、さらに基礎代謝を落とさないための理想的な栄養バランスです。(出典:文部科学省『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』)
さらに注目すべきは、微量栄養素の働きです。エビの赤色成分である「アスタキサンチン」には、ビタミンEの数百倍とも言われる強力な抗酸化作用があり、紫外線による肌のダメージケアやアンチエイジング効果が期待されています。また、栄養ドリンクでおなじみの「タウリン」も豊富に含まれており、疲労回復や肝機能のサポートにも役立ちます。バナメイかブラックタイガーかに関わらず、エビを食べることは美容と健康への投資になると言っても過言ではありません。
ちなみに、お刺身で食べられる「赤海老」もスーパーの人気者ですよね。
半額の赤海老をフルコースで楽しむ方法は、以下の記事で紹介しています。
【サカシュン流】赤海老の頭は捨てないで!半額パックで作る絶品しゃぶしゃぶ&濃厚海老味噌ラーメンのレシピ
バナメイエビとブラックタイガーの違いで料理を分類
ここまでで、両者の違いが「食感(弾力 vs 柔らかさ)」と「甘味」、そして「価格」にあることが分かりました。では、具体的に「今日の晩ご飯にはどっちを選べばいいの?」という疑問にお答えしましょう。プロの視点から、それぞれの特性を最大限に活かした最適な使い分けをご提案します。
エビフライに向く弾力あるタイガー

「今日は誕生日だから、ご馳走のエビフライを作ろう!」という日は、迷わずブラックタイガーをカゴに入れてください。
エビフライの醍醐味は、サクサクの衣の中に隠れた、弾けるようなエビの存在感です。ここで身の柔らかいバナメイエビを使ってしまうと、厚めの衣の食感にエビが負けてしまい、「衣を食べているような感覚」になってしまうことがあります。しかし、ブラックタイガーの太い繊維と強い弾力は、衣に負けません。加熱しても身がしっかりしているので、噛んだ瞬間に「プリッ!」とした小気味よい食感が楽しめます。
また、ブラックタイガーは加熱しても赤色が濃く鮮やかで、身の縮みも比較的少ないため、真っ直ぐで太い、お店のような立派なエビフライを作りやすいという利点もあります。天ぷらも同様です。衣の中で蒸し焼き状態になっても、ブラックタイガーならその食感を失いません。塩焼きやバーベキューなど、エビそのものを主役にする料理には、やはりタイガーの力強さが必要です。
エビチリや炒め物は甘いバナメイ

一方で、エビチリ、エビマヨ、八宝菜、グラタン、パスタなどにするなら、バナメイエビが圧倒的におすすめです。
これらの料理の共通点は、「ソースや他の食材と絡める」ことです。ここでブラックタイガーを使うと、エビの主張が強すぎて、ソースと馴染まずに浮いてしまうことがあります。しかし、バナメイエビの柔らかい身は、ソースとの親和性が抜群です。表面のキメが細かいためソースがよく絡み、口の中でトロッと一体化します。特にエビチリやエビマヨでは、バナメイエビの持つ強い甘みが、辛味や酸味のあるソースと絶妙なバランスを生み出し、料理全体の味を底上げしてくれます。
また、野菜炒めなどのスピード料理にもバナメイは最適です。身が柔らかいため火の通りが早く、さっと炒めるだけでプリプリの食感に仕上がります。加熱しすぎても硬くなりにくいため、料理初心者の方でも失敗が少ないのも嬉しいポイントです。「安いから妥協してバナメイ」ではなく、「この料理には柔らかいバナメイの方が美味しくなるから」という理由で、積極的に選んでみてください。
バナメイエビの柔らかい身は、バターやニンニクとの相性も抜群です。
以前紹介した「魚屋特製パセリバター」を使ってソテーにすれば、安いむきエビが瞬時にビストロのメインディッシュに変わりますよ。
魚屋のエスカルゴバター(パセリバター)の作り方!サイゼリヤ越え?の隠し味で魚介が劇的に旨くなる
片栗粉での下処理で臭みを消す技
「バナメイエビを買うと、たまに泥臭い時がある…」そんな経験はありませんか?実はこれ、品種のせいだけではなく、下処理で完全に解決できる問題です。安いバナメイエビを、まるで高級ホテルのエビのようなクリアな味わいに変える、魔法のような下処理方法をご紹介します。
必要なのは、どこの家庭のキッチンにもある「片栗粉」と「塩」と「水」だけです。このひと手間を加えるだけで、特有の臭みが嘘のように消え去り、加熱後のプリプリ感も格段にアップします。
なぜ片栗粉が必要なのでしょうか?ただ水で洗うだけでは、表面の汚れは落ちても、微細なシワに入り込んだ臭み成分までは取りきれません。片栗粉の細かいデンプン粒子が、塩の浸透圧で浮き出た汚れやヌメリを物理的に吸着し、絡め取ってくれるのです。
この工程を経たバナメイエビは、色がワントーン明るくなり、透き通るような美しさを手に入れます。面倒に感じるかもしれませんが、この一手間を惜しまないことが、スーパーのエビをレストランの味に近づける最短ルートです。
殻ごと食べるレシピとカルシウム

殻が薄いバナメイエビならではの楽しみ方、それは「殻ごと食べる」調理法です。「エビの殻なんて硬くて食べられないでしょ?」と思うかもしれませんが、バナメイエビなら話は別です。
ブラックタイガーの殻は非常に分厚く硬質で、加熱しても口の中にいつまでも残ってしまうため、食べるのには適していません。しかし、バナメイエビの殻は薄く、高温で揚げたり焼いたりすることで、パリパリとした香ばしいスナックのような食感に変わります。
代表的な料理といえば、ハワイの定番料理「ガーリックシュリンプ」です。殻付きのまま背中に切り込みを入れ、たっぷりのニンニクとオリーブオイルで炒めることで、殻と身の間に旨味が閉じ込められ、手づかみで豪快に食べる美味しさは格別です。また、片栗粉をまぶして丸ごと揚げた「素揚げ」や「唐揚げ」にすれば、頭から尻尾までサクサクと美味しくいただけます。
そして、これは栄養面でも大きなメリットがあります。エビの殻には、日本人に不足しがちなカルシウムや、動物性の食物繊維であるキチン・キトサンが豊富に含まれています。身だけを食べるよりも圧倒的に栄養価が高く、育ち盛りのお子様の骨作りや、イライラ防止にも役立ちます。ゴミも出ず、栄養も摂れて、しかも美味しい。まさに「一石三鳥」の食べ方ができるのは、殻の柔らかいバナメイエビだけの特権なのです。
まとめ:バナメイエビとブラックタイガーの違い
長くなりましたが、今回のお話をまとめておきましょう。スーパーの鮮魚コーナーで「どっちにしようかな?」と迷ったときは、値段だけで決めるのではなく、この「使い分けの基準」を思い出してください。
【ブラックタイガーを選ぶべき時】
- 料理:エビフライ、天ぷら、塩焼き、おせち料理
- 求めているもの:「ガッツリとした強い弾力」「主役級の存在感」「真っ赤な彩り」
- ポイント:加熱しても身が縮みにくく、衣に負けない歯ごたえが欲しい時に最適。
【バナメイエビを選ぶべき時】
- 料理:エビチリ、エビマヨ、パスタ、グラタン、炒め物、ガーリックシュリンプ
- 求めているもの:「フワッとした柔らかさ」「ソースとの絡み」「強い甘み」「コスパ」
- ポイント:殻が柔らかく甘みが強いため、味付けの濃い料理や殻ごと食べる料理に最適。
「高いブラックタイガーだから美味しい」「安いバナメイだから不味い」という固定観念は、もう捨ててしまいましょう。それぞれの「得意分野」が違うだけで、どちらも素晴らしい食材です。
今日は、ガツンと弾力を楽しむブラックタイガーにしますか?それとも、甘くとろけるバナメイエビにしますか?作る料理に合わせてベストな選択をし、魔法の下処理を施せば、いつものお家ご飯が、家族みんなが笑顔になる「ご馳走」に変わること間違いなしです。ぜひ、自信を持ってカゴに入れて、美味しいエビ料理を楽しんでくださいね。