※本ページはプロモーションが含まれています 魚図鑑

アトランティックサーモンとトラウトサーモンの違い!味や値段を比較

スーパーの鮮魚コーナーやお寿司屋さんでサーモンを選ぶとき、ふと疑問に思ったことはありませんか。

「アトランティックサーモン」と「トラウトサーモン」、名前は似ているけれど一体何が違うのだろう、と。

どちらを選べば自分好みの味に出会えるのか、あるいは料理に失敗しないのか、と悩む場面は意外と多いものです。

名前が似ているだけで中身は全く別の魚なのか、それとも産地や育て方が違うだけなのか、その正体は意外と知られていません。

特に、私たち日本人にとって「生食」ができるかどうかは死活問題ですし、気になるアニサキスなどの安全性や、決して安くはない値段の差についても、納得した上で購入したいですよね。

実は、この二つには生物学的なルーツから養殖環境、そして栄養価に至るまで、驚くほど明確な違いが存在します。

この記事では、長年魚に親しんできた私が実際に調べた一次情報や実食経験をもとに、それぞれの特徴や見分け方、そして美味しい食べ方を徹底的に深掘りしてお伝えしていこうと思います。

読み終える頃には、あなたもサーモン選びの達人になっているはずですよ。

この記事で分かること

  • 生物学的な分類の違いやそれぞれの正式名称・学名
  • 脂の乗り具合や食感など味の決定的な違いと官能評価
  • スーパーでの見分け方と料理に合わせた賢い選び方
  • 気になる安全性や栄養価、アニサキスリスクと価格相場の比較

アトランティックサーモンとトラウトサーモンの違いの定義

まずは、この二つのサーモンがそもそもどういった魚なのか、その根本的な部分から見ていきましょう。「サーモン」という言葉でひとくくりにされがちですが、実は生物学的なルーツや育ってきた環境には、人間で言えば国籍が違うレベルの明確な違いがあります。これを知るだけで、後ほど解説する味や食感の違いにも、「なるほど!」と深く納得がいくはずです。

何目何科?生物学的な分類と正式名称

いきなり少し理科の授業のような堅い話になってしまいますが、ここが全ての基礎になる最も重要な部分です。結論から言うと、アトランティックサーモンとトラウトサーモンは、同じ「サケ目サケ科」に属してはいますが、その下の「属」レベルで明確に異なる魚種なのです。

アトランティックサーモンの正体

まずアトランティックサーモンですが、和名では「タイセイヨウサケ(大西洋鮭)」と呼ばれています。その名の通り、北大西洋が原産地であり、生物学的には「サケ目サケ科タイセイヨウサケ属(サルモ属)」に分類されます。学名は Salmo salar といい、ラテン語で「跳ぶ人」を意味するほど活発な魚です。

進化の系統で言うと、アトランティックサーモンは日本の秋鮭(シロザケ)などの太平洋サケ類とは少し離れた親戚にあたります。最大の特徴は、太平洋サケが一度産卵すると死んでしまうのに対し、アトランティックサーモンは産卵後も生き残り、数年にわたって繰り返し繁殖が可能であるという点です。この生命力の強さと大型化する遺伝的特性が、後の養殖産業において品種改良のベースとなり、現在のような巨大な養殖産業を支えることになりました。

トラウトサーモンの正体

一方でトラウトサーモンですが、実はこの名前、生物学的な正式名称ではありません。流通上の商品名であり、その正体はなんと「ニジマス(レインボートラウト)」なのです。ニジマスは「サケ目サケ科タイヘイヨウサケ属(オンコリンクス属)」に分類され、学名は Oncorhynchus mykiss といいます。つまり、分類上はシロザケやベニザケ、ギンザケに近い、より「サケらしい」系統に含まれます。

「えっ、マスなの?」と驚かれる方も多いでしょう。本来、ニジマスは一生を淡水(川や湖)で過ごす魚です。しかし、ニジマスの中には海に下って大きく成長する「スチールヘッド(降海型ニジマス)」というタイプが存在します。この生態を利用し、淡水で孵化させたニジマスを海面の生簀(いけす)に移し、海水で大きく育て上げたものが「トラウトサーモン」として流通しているのです。つまり、トラウトサーモンとは「海で養殖されたニジマス」のことなんですね。

簡単な覚え方と分類まとめ

流通名アトランティックサーモントラウトサーモン
和名タイセイヨウサケニジマス(海面養殖)
タイセイヨウサケ属 (Salmo)タイヘイヨウサケ属 (Oncorhynchus)
特徴北大西洋原産、複数回産卵可能太平洋原産、マスの仲間

産地や養殖環境による見た目の特徴

スーパーでパック詰めされた切り身をパッと見たとき、「こっちの方が色が濃いな」とか「こっちは脂の筋が太いな」と感じたことはありませんか。実はそれ、産地や種類の違い、そして育てられた環境が大きく関係しているんです。それぞれの魚がどのような場所で育ってくるのかを知ると、見た目の違いの理由が見えてきます。

アトランティックサーモンの主な産地と環境

アトランティックサーモンは冷たく澄んだ海水を好むため、主な産地は北欧のノルウェーが圧倒的なシェアを誇り、次いでチリ、カナダ、イギリス(スコットランド)、オーストラリア(タスマニア)などが続きます。特にノルウェー産のものは、複雑に入り組んだフィヨルドの静かな海域に巨大な生簀を設置して育てられます。

ノルウェーの海は水温が年間を通じて低く安定しているため、魚はゆっくりと時間をかけて成長します。生簀の中で数年かけてじっくり育てられた成魚は、体長1メートルを超え、体重も10kg以上に達することが珍しくありません。この大型化のプロセスにおいて、筋肉の繊維の間にたっぷりと脂肪を蓄え込むため、切り身にした際の断面には、鮮やかなオレンジ色の身に白い脂肪の筋(サシ)が太くくっきりと入るのが特徴です。これが、あの上品なピンクオレンジ色の正体ですね。

トラウトサーモンの主な産地と環境

対してトラウトサーモン(サーモントラウト)は、南半球のチリが世界最大の生産地として知られています。また、最近ではノルウェーやトルコ、そして日本国内(ご当地サーモンなど)でも養殖が盛んに行われています。

トラウトサーモンは、アトランティックサーモンに比べると病気への耐性が比較的強く、成長が早いのが特徴です。海面養殖される期間はアトランティックよりも少し短く、成魚のサイズも60cm〜80cm、体重3kg〜5kg程度と一回り小ぶりで出荷されることが一般的です。このサイズ感の違いは、切り身の形にも表れます。

見た目の最大の特徴は、身の色が非常に鮮やかで濃い赤〜オレンジ色(紅鮭に近い色)をしていることでしょう。ニジマスはもともとアスタキサンチンという色素を筋肉に定着させやすい性質を持っており、飼料に含まれる成分の影響もあって、食卓に並べたときにパッと目を引く美しい赤色になります。アトランティックの「優しいオレンジ」に対し、トラウトは「力強いレッドオレンジ」といった印象ですね。

脂乗りや食感など味の比較と特徴

ここが皆さんが一番気になるところではないでしょうか。実際に食べてみたときの「味」と「食感」の違いです。私自身、両方を食べ比べてみることがよくありますが、この二つは明確にキャラクターが違います。「どっちもサーモンでしょ?」と思っていると、良い意味で裏切られることになりますよ。

アトランティックサーモン:脂の王様

アトランティックサーモンを一言で表すなら「濃厚でとろける、脂の王様」ですね。最大の特徴は、全身に霜降りのように行き渡った豊富な脂質です。特に腹身(ハラス)の部分などは、醤油につけるとパッと脂の膜が広がるほど。

口に入れた瞬間、体温で脂が溶け出し、濃厚な甘みと旨味が口いっぱいに広がります。身質は非常に柔らかく、噛まなくてもとろけてなくなるような感覚があります。魚特有の生臭さも少なく、クリーミーで洗練された味わいです。「今日はガツンと脂の乗ったお寿司が食べたい!」という時には、これ以上の選択肢はないでしょう。マグロでいうところの「大トロ」や「中トロ」に近い満足感が得られます。

トラウトサーモン:バランスの優等生

一方のトラウトサーモンは、「程よい脂としっかりした弾力、バランスの優等生」と言えます。アトランティックに比べると脂の量は少し控えめですが、決してパサパサしているわけではありません。

最大の特徴は、その食感です。身の繊維がしっかりしており、プリプリ、モチモチとした心地よい弾力があります。噛むほどに、サケ・マス類本来の魚の旨味と甘みが感じられ、「魚を食べている」という実感が湧きます。脂が強すぎないので、たくさん食べても胃もたれしにくく、さっぱりとした後味が楽しめます。「サーモンの脂っこさが少し苦手」という方や、「歯ごたえを楽しみたい」という方には、間違いなくこちらが合うと思います。

比較項目アトランティックサーモントラウトサーモン
食感ふんわり柔らかく、とろけるプリプリとして弾力がある、モチモチ
脂乗り非常に多い(濃厚)適度〜多い(あっさり)
味の傾向脂の甘みが主役、クリーミー魚の旨味が主役、さっぱり
おすすめ層こってり派、トロ好きさっぱり派、食感重視

なぜ2つの呼び名があるのか理由を解説

「そもそも、なんでニジマスなのに『トラウトサーモン』なんて紛らわしい名前で呼ぶの?」と不思議に思いますよね。そのまま「海面養殖ニジマス」と呼べばいいのに、と思わずツッコミたくなります。実はこれには、日本の水産流通の歴史と、巧みなマーケティング戦略が深く関わっているのです。

「マス」のイメージを変えるための戦略

もともと日本では、「マス(鱒)」というと川魚のイメージが強く定着していました。かつては寄生虫のリスクから生食が難しかったり、泥臭いイメージを持たれたりすることもあり、高級な寿司ネタとしての地位は低かったのです。一方で、「サケ(サーモン)」は贈答用にも使われる高級魚のイメージがありました。

そこで、チリなどで海面養殖を行い、美味しく、しかも生で安全に食べられるように育て上げたニジマスを日本市場に売り出す際、販売業者たちは考えました。「ニジマス」として売るよりも、「サーモン」の仲間として売った方が消費者に手に取ってもらえるのではないか、と。

「トラウト(鱒)」+「サーモン(鮭)」の誕生

こうして生まれた造語が「トラウトサーモン(サーモントラウト)」です。「トラウト(鱒)」という実態を残しつつ、「サーモン(鮭)」という魅力的な響きを組み合わせることで、消費者に「サーモンのような美味しさを持つマスの仲間」という新しい価値を提案したのです。

このネーミング戦略は大成功しました。「色が綺麗で、安くて、美味しいサーモン」として回転寿司チェーンやスーパーに広く普及し、今では「トラウトサーモン」という名前が完全に市民権を得ました。つまり、この呼び名の裏には、美味しい魚を日本の食卓に届けたいという業界の知恵と努力が隠されていたわけですね。

スーパーでの見分け方とラベル表示

いざスーパーの鮮魚コーナーに行っても、切り身の状態だとどっちがどっちか分からなくなることがありますよね。見た目の色だけで判断するのは慣れが必要ですし、照明の具合によっては見間違えることもあります。そんな時、確実に正解を見抜くためのチェックポイントを伝授します。

1. ラベル(一括表示)の「名称」を確認する

これが最も確実な方法です。食品表示法により、魚の名称は正しく記載することが義務付けられています。

  • アトランティックサーモン:そのまま「アトランティックサーモン」または和名の「タイセイヨウサケ」と記載されています。高級スーパーなどでは「ノルウェーサーモン」といったブランド名で書かれていることもありますが、裏面の原材料名を見れば確認できます。
  • トラウトサーモン:「トラウトサーモン」「サーモントラウト」と記載されています。スーパーによっては、正直に「ニジマス(養殖)」と書いているところもありますが、同じものです。

2. 「産地」をチェックする

産地も大きなヒントになります。

  • ノルウェー産:多くの場合、アトランティックサーモンです。ノルウェーはアトランティックサーモンの聖地とも言える場所です。
  • チリ産:トラウトサーモンであることが多いですが、実はチリではアトランティックサーモンも養殖されています。ですので、「チリ産=トラウト」と決めつけるのは少し早計ですが、安価な冷凍解凍品であればトラウトの可能性が高いです。
  • トルコ産・国産(ご当地):これらはトラウトサーモン(ニジマス)であるケースが非常に多いです。

3. 「身の色」と「サシ(脂)」を見る

先ほども触れましたが、視覚的な違いも判断材料になります。

  • アトランティック:全体的に白っぽいオレンジ色(ピンクサーモン色)。白い脂の筋が太く、はっきりと見えます。
  • トラウト:鮮やかで濃い赤〜オレンジ色。脂の筋はあるものの、アトランティックほど太く主張していないことが多いです。

賢い買い物のコツ
ラベルを見て「解凍」と書かれていたら、一度冷凍されて運ばれてきた証拠です(主にチリ産トラウトなど)。逆に「養殖(生)」と書かれていてノルウェー産なら、一度も冷凍されずに空輸されたアトランティックサーモンである可能性が高く、鮮度抜群です。

刺身や寿司など用途別の選び方

「今日は手巻き寿司にするから、どっちを買おうかな?」と迷った時、あるいは「今夜はムニエルにしよう」と思った時、どちらを選ぶのが正解なのでしょうか。それぞれの魚が持つ「脂」と「身質」の特徴を活かした、失敗しない選び方の基準をご紹介します。

生食(刺身・寿司・カルパッチョ)なら

生で食べる場合、決め手は「脂の濃さ」と「とろけ具合」です。

  • こってり派には「アトランティック」: お寿司屋さんで食べるような、脂が乗っていて口の中でとろける感覚を楽しみたいなら、迷わずアトランティックサーモンを選びましょう。特に酢飯との相性は抜群で、脂の甘みが酢の酸味をまろやかにしてくれます。厚切りにしても柔らかいので食べやすいです。
  • さっぱり派・彩り重視なら「トラウト」: マリネやカルパッチョ、海鮮丼など、野菜と一緒に盛り付ける料理にはトラウトサーモンがおすすめです。鮮やかな赤色が食卓を華やかにしますし、オリーブオイルやドレッシングをかけても、魚自体の脂がくどくないのでバランス良くまとまります。

お刺身についてもっと知りたい方は、青魚・白身魚・赤身魚の違いを解説した記事も参考になります。実はサーモンは白身魚なんですよ!

加熱調理(焼き・揚げ・煮る)なら

火を通す場合、重要なのは「身崩れのしにくさ」と「脂の流出」です。

  • ムニエル・フライには「トラウト」: 加熱調理の最強の味方はトラウトサーモンです。身の繊維がしっかりしているため、焼いたり揚げたりしても身崩れしにくく、扱いやすいのが特徴です。また、アトランティックほど脂が多くないため、油を使う料理でもギトギトになりすぎず、ふっくらと美味しく仕上がります。お弁当のおかずにも最適ですね。
  • クリーム煮・シチューには「アトランティック」: 逆に、煮込み料理やホイル焼きなど、脂の旨味をソースに溶け込ませたい場合はアトランティックサーモンが良いでしょう。加熱すると豊富な脂が溢れ出し、料理全体にコクを与えてくれます。ただし、焼き魚にする場合は脂が出すぎてグリルが汚れることがあるので注意が必要です。

アトランティックサーモンとトラウトサーモンの違いと比較

さて、ここからはもう少し実用的な視点で、私たちの生活に直結する「お財布事情」や「健康面」での違いを徹底比較していきましょう。毎日食べるものだからこそ、価格の仕組みや栄養価、そして安全性については正しく理解しておきたいですよね。

気になる値段や価格相場の比較

スーパーで二つのサーモンが並んでいると、明らかに値段が違うことに気づくと思います。一般的には、アトランティックサーモンの方が高く、トラウトサーモンの方が安い傾向にあります。では、なぜこの価格差が生まれるのでしょうか。

アトランティックサーモンの価格構造:プレミアムな空輸便

ノルウェー産などのアトランティックサーモンは、現地で水揚げされてから一度も冷凍せずに、氷詰めの状態で生のまま飛行機で日本へ空輸されるのが一般的です。これを「チルド輸送」と呼びます。航空運賃は高額ですが、その分「獲れたての鮮度」と「生のとろける食感」をそのまま日本の食卓に届けることができます。この輸送コストと、世界的な需要の高まりによるブランド価値が、価格に反映されています。スーパーでの相場は、100gあたり600円〜800円前後、特売時でも500円台となることが多い「ご馳走サーモン」です。

トラウトサーモンの価格構造:高効率な冷凍船便

一方、チリ産などのトラウトサーモンは、現地で加工された後に急速冷凍され、大型の冷凍船で時間をかけて運ばれるケースが主流です。一度に大量に、かつ安価に運べる船便を利用することで、輸送コストを大幅に圧縮しています。最近の冷凍技術は非常に進化しており、解凍しても生食可能な高品質を保っています。スーパーでの相場は、100gあたり300円〜450円ほどと、アトランティックの半値近くで購入できることもあり、家計の強い味方です。回転寿司の100円皿(現在は値上がりしていますが)などで使われているサーモンの多くは、このトラウトサーモンです。

カロリーや栄養成分の比較データ

「サーモンは体に良い」とよく聞きますが、健康やダイエットを気にされている方にとっては、具体的なカロリーや脂質の量の違いも重要な選択基準ですよね。実際に数値を比べてみると、両者のキャラクターの違いがはっきりと見えてきます。

100gあたりの栄養成分比較

以下は、一般的な数値を目安とした比較表です。

栄養成分(100gあたり)トラウトサーモン(皮つき/生)アトランティックサーモン(皮つき/生)
エネルギー約 201 kcal約 237 kcal
タンパク質約 21.4 g約 20.1 g
脂質約 14.2 g約 16.5 g〜20g以上

データを見ると、アトランティックサーモンの方が高カロリーかつ高脂質であることが分かります。個体差はありますが、特に脂の乗ったハラス部分などは脂質が20gを超えることもあります。この豊富な脂質には、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といった、血液をサラサラにする良質なオメガ3脂肪酸がたっぷりと含まれています。

一方、トラウトサーモンは脂質が控えめな分、タンパク質の割合が高く、カロリーもやや低めです。筋肉作りをしている方や、脂質制限ダイエットをしている方にとっては、トラウトサーモンの方が栄養学的に優れた選択肢と言えるかもしれません。また、トラウトサーモンの鮮やかな赤色は、強力な抗酸化作用を持つ「アスタキサンチン」によるものです。アンチエイジングや眼精疲労の改善に関心がある方にも嬉しいポイントですね。

(出典:文部科学省『食品成分データベース』より、類似魚種等のデータを参照・比較)

アニサキスや寄生虫の危険性と安全性

生魚、特にお刺身を食べる時にどうしても頭をよぎるのが「アニサキス」などの寄生虫リスクですよね。「サーモンを生で食べてお腹が痛くなったらどうしよう」と不安に思う方もいるかもしれません。しかし、結論から言うと、スーパーで売られている刺身用サーモンに関しては、アトランティックもトラウトも、どちらも極めて安全です。

なぜ「養殖」だと安全なのか?

市場に流通している生食用のサーモンは、そのほぼ100%が「養殖」です。ここが最大のポイントです。天然のサケ(秋鮭など)は、海でオキアミなどの甲殻類を捕食しますが、このオキアミがアニサキスの宿主となっているため、天然サケには高確率で寄生虫がいます。だから天然サケは生食厳禁(ルイベや加熱が必須)なのです。

一方、養殖のアトランティックサーモンやトラウトサーモンは、稚魚の頃から管理された環境で育ちます。餌は、加熱処理された安全な「ドライペレット(人工飼料)」を与えられているため、アニサキスの生活環が完全に遮断されています。つまり、寄生虫が入る隙がないのです。「養殖だから薬漬けで怖い」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、寄生虫リスクに関しては「養殖だからこそ生食が安全」というのが正しい理解です。

もちろん、ノルウェーやチリの大手養殖業者は、国際的な衛生基準や環境基準(ASC認証など)をクリアしており、抗生物質の使用も厳格に管理・削減されています。日本の厚生労働省の検疫も通過しているので、安心して生の美味しさを楽しんでください。

【重要】天然物は注意!
釣り堀や渓流で自分で釣った「天然のニジマス」や、海で釣れた「天然のサケ」には寄生虫のリスクがあります。これらは決して生で食べず、必ず中心部まで加熱するか、マイナス20度以下で24時間以上冷凍処理を行ってから食べるようにしましょう。

料理別のおすすめ食べ方とレシピ

ここまで、アトランティックサーモンとトラウトサーモンの生物学的な違いや、味・食感の特性について詳しく見てきました。それぞれの個性が分かったところで、次はその特徴を最大限に活かす「美味しい食べ方」についてお話ししましょう。どちらも素晴らしい食材ですが、適材適所で使い分けることで、料理のクオリティがグッと上がります。私が普段実践しているおすすめの調理法や、ちょっとしたレシピのコツを具体的にご紹介します。

アトランティックサーモンを美味しく食べるなら

アトランティックサーモンの最大の武器は、なんといってもその「濃厚な脂」と「とろける柔らかさ」です。この特徴を活かすには、やはり「生食」が一番ですが、加熱する場合も脂のコクを利用する料理が向いています。

  • 至高の「刺身・寿司」:
    まずはシンプルにわさび醤油で。脂が醤油を弾くほどの濃厚さを楽しんでください。薄切りにするよりも、少し厚めにカットした方が、口の中でとろける食感(メルティング感)をより強く感じられます。炙りサーモンにするのも最高です。バーナーで表面をサッと炙ると、皮目の脂が溶け出して香ばしさが加わり、甘みが一層引き立ちます。
  • 濃厚「サーモン漬け丼」:
    脂が多いアトランティックサーモンは、漬けダレに少し長めに漬け込んでも身が固くなりすぎません。醤油、みりん、酒、少しのごま油で作ったタレに30分ほど漬け込み、熱々のご飯に乗せれば、脂の甘みとタレの塩気が絶妙に絡み合う絶品丼の完成です。卵黄を落とせば、さらに濃厚な味わいになりますよ。
  • リッチな「クリームシチュー・グラタン」:
    加熱料理なら、クリームソース系との相性が抜群です。アトランティックサーモンから出る脂の旨味がホワイトソースに溶け込み、出汁を使わなくても深みのある味になります。身が柔らかいので、煮込みすぎると崩れてしまいますが、そのほろほろと崩れる身をソースと一緒にすくって食べるのがまた美味しいんです。

トラウトサーモンを美味しく食べるなら

一方、トラウトサーモンの持ち味は、「鮮やかな赤色」と「プリッとした弾力」、「程よい脂」です。加熱しても身がしっかりしていて崩れにくく、油との相性も良いので、毎日の家庭料理にはこちらの方が扱いやすい場面が多いかもしれません。

  • 王道の「ムニエル・バターソテー」:
    トラウトサーモンは加熱しても身がパサつかず、ふっくらとした食感を保ちます。塩胡椒をして小麦粉を薄くまぶし、バターで皮目をパリッと焼き上げましょう。アトランティックだと脂が出すぎて少しオイリーになりがちですが、トラウトならバターのコクと魚の旨味が喧嘩せず、最後までさっぱりと美味しく食べられます。レモンを絞れば完璧ですね。
  • サクサク「サーモンフライ」:
    お子様にも大人気なのがフライです。トラウトサーモンのしっかりした身は、衣をつけて揚げても存在感があります。程よい脂乗りなので、揚げ物にしても重たくなりすぎません。鮮やかなオレンジ色の断面は見た目にも食欲をそそり、タルタルソースの酸味ともベストマッチします。冷めても美味しいので、お弁当のおかずにも最適ですよ。
    ちなみに、フライに合わせるなら、私が魚介フライ専用に開発した【サカシュン流】究極のタルタルソースが最高におすすめです!
  • 彩り豊かな「カルパッチョ・マリネ」:
    生食なら、野菜たっぷりのメニューがおすすめです。トラウトサーモンの濃い赤色は、レタスの緑や玉ねぎの白によく映えます。身に弾力があるので、薄切りにしても食感が残ります。オリーブオイルやビネガーを使った酸味のあるドレッシングをかけても、魚自体の味がしっかりしているので負けません。さっぱりとサラダ感覚で食べたい時にぴったりです。

料理選びのワンポイントアドバイス
「こってり」させたいならアトランティック
「食感」を残したいならトラウト
「煮込み」でコクを出したいならアトランティック
「焼き・揚げ」で形を保ちたいならトラウト

アトランティックサーモンとトラウトサーモンの違い総括

ここまで、アトランティックサーモンとトラウトサーモンの違いについて、生物学的なルーツから味の傾向、栄養価、そしておすすめの食べ方に至るまで、徹底的に深掘りしてきました。長い記事にお付き合いいただき、本当にありがとうございます。

最後に改めて、今回の記事の要点を整理しておきましょう。

比較項目アトランティックサーモントラウトサーモン
正体タイセイヨウサケ(サケ属)ニジマス(タイヘイヨウサケ属)
主な産地ノルウェー(空輸・生)チリ(船便・冷凍)
味の個性脂が濃厚でとろける甘み身に弾力があり旨味が強い
価格感プレミアム(ご馳走向け)リーズナブル(日常向け)
安全性養殖のため生食OK(アニサキス安全)養殖のため生食OK(アニサキス安全)

今回、私が皆さんに一番お伝えしたかったのは、「どちらが優れているか」という勝ち負けの話ではないということです。アトランティックサーモンには「とろけるような脂の至福」があり、トラウトサーモンには「毎日食べても飽きない魚の旨味と使い勝手の良さ」があります。

「今日は給料日だし、自分へのご褒美にアトランティックサーモンの大トロ部分を買って、家で贅沢な手巻き寿司パーティーをしよう!」
「今夜は野菜も摂りたいから、トラウトサーモンを使って彩り鮮やかなムニエルとマリネを作ろう!」

こんなふうに、その日の気分や予算、作りたい料理に合わせて自由に選び分けられるようになれば、あなたの食卓はもっと豊かで楽しいものになるはずです。スーパーの鮮魚コーナーで二つのサーモンが並んでいるのを見かけたら、ぜひこの記事を思い出して、その日の「正解」を選び取ってくださいね。

これからも、美味しい魚のある生活を一緒に楽しんでいきましょう。

-魚図鑑
-, , , , , ,