スーパーの鮮魚コーナーでお客さんの様子を見ていると、レシピにはスミイカって書いてあるけど、目の前にあるモンゴウイカじゃダメなの、と悩んでいる方をよくお見かけします。去年の春に働き始めた私自身も最初は戸惑いましたし、値段や見分け方が気になってモンゴウイカやコウイカ、スミイカの違いについてスマホで検索するお気持ちはすごくわかります。
結論から言うと、スミイカとはコウイカの関東での呼び名に過ぎません。そして、ご家庭でイカスミパスタや炒め物などのレシピを作るなら、スーパーで手に入りやすい肉厚なモンゴウイカこそが最適解です。
この記事では、それぞれの特徴や刺身への向き不向きなどをわかりやすくお伝えしますね。
この記事で分かること
- スミイカとコウイカは呼び方が違うだけで実は同じイカであること
- お寿司や刺身で食べるならサクッと甘いコウイカが向いている理由
- スーパーで見かけるモンゴウイカは加熱料理にぴったりな輸入の別種
- 気になるアニサキスのリスクが低い理由と自宅で楽しむ安全な調理法
モンゴウイカとコウイカやスミイカの違い
まずは、この3つのイカがそもそもどう違うのかについて、生物学的な特徴や歴史的な背景も交えながら整理していきますね。スーパーの店頭に並ぶイカの本当の正体や、それぞれがどんな料理に向いているのかを知ることで、毎日の献立選びがずっとラクになり、お買い物がもっと楽しくなるかなと思います。
スミイカとはコウイカの関東での呼び名

鮮魚コーナーで「スミイカって売ってないの?」と聞かれることがよくありますが、実はスミイカという独立した種類のイカが存在するわけではありません。結論から言ってしまうと、スミイカとは標準和名「コウイカ」のことであり、両者は生物学的に全く同じイカを指しています。では、なぜ別の名前で呼ばれるようになったのでしょうか。それは、関東地方を中心とした江戸前寿司の食文化に深く関係しています。
コウイカは、スルメイカなどの他のイカ類と比較して、体内に非常に大きくて発達した墨袋(墨汁嚢)を持っています。外敵から身を守る際や、網で漁獲されて水揚げされる際に、粘り気の強い真っ黒な墨を大量に吐き出すという特徴があるんです。この強烈な生理学的特徴から、江戸時代の東京湾(江戸前)の漁師さんや寿司職人たちの間で「墨をたくさん吐くイカ=スミイカ」という愛称が定着し、それが現在まで文化的な流通名として受け継がれています。
見た目の特徴としては、胴体(外套膜)の背中側に、綺麗な黒褐色の横縞模様(虎の縞模様に似たパターン)が密に入っているのが目印です。この縞模様を使って海底の砂や泥に擬態し、周囲の景色に溶け込んでいるんですね。また、胴体の縁全体にフリルのようなヒレ(エンペラ)が付いているのも特徴的です。西日本などではそのまま「コウイカ」と呼ばれることが多いですが、関東の市場やお寿司屋さんでは、今でも圧倒的に「スミイカ」という呼び名が愛され続けています。
コウイカの仲間は、スルメイカのような透明で薄い軟骨ではなく、背中側にチョークのような分厚くて硬い石灰質の「甲(舟)」を背負っているのが最大の特徴です。この甲の内部には微細な空洞が無数にあり、そこにガスと体液を出し入れして浮力を調節するという、まるで潜水艦のようなハイテクな機能を持っています。
刺身や寿司ならサクッと甘いコウイカを

コウイカ(スミイカ)を食べる上で最大の魅力は、なんといっても生で食べたときのサクッとした軽快な歯切れの良さと、噛むごとに溢れ出す上品で繊細な甘みにあります。この独特の食感と味わいは、コウイカ特有の筋肉の組織構造によって生み出されています。
コウイカの身(外套膜)は、非常に微細なコラーゲン繊維が何層にも重なり合って構成されています。そのため、お刺身やお寿司のネタとして生のまま口に入れたとき、人間の歯が繊維の間にスッと入りやすく、スルメイカのような強い弾力とは違った、心地よい「サクッ」とした歯ごたえを感じさせてくれるんです。さらに、旨みと甘みを感じさせる遊離アミノ酸(グリシン、アラニン、プロリンなど)が極めて高い濃度で含まれており、これが上品な味わいの正体となっています。
特に日本の食文化で重宝されているのが、晩夏から初秋にかけてわずかな期間だけ出回る「新イカ(シンイカ)」です。新イカとは、孵化して間もないコウイカの赤ちゃんのこと。ほんの数センチしかない小さな体は、大人のイカに比べて筋肉の組織がまだ柔らかく、口の中で淡雪のようにとろける究極の食感が楽しめます。一杯からお寿司一貫しか取れないほど歩留まりが悪く、鮮度も落ちやすいため、豊洲市場などではマグロやウニに匹敵する超高級品として取引されています。
ご家庭で大人のコウイカをお刺身で食べる際は、表面に細かい隠し包丁(格子状の切れ目)を入れるのがおすすめです。こうすることで、舌に触れる表面積が広がり、豊かな甘み成分が一気に溶け出して、プロ顔負けの極上の味わいを楽しむことができますよ。お醤油も良いですが、お塩とカボスやスダチなどの柑橘類をちょっと絞るのが最高の食べ方ですね。
スーパーのモンゴウイカは輸入の別種

さて、ここからが読者の方が最も混乱しやすい「モンゴウイカ」の正体についてのお話です。現代のスーパーマーケットの鮮魚コーナーや冷凍食品売り場で「モンゴウイカ」というパックのシールが貼られて販売されているものの大多数は、実は昔から日本近海に生息している本来のモンゴウイカではありません。アフリカ西海岸やヨーロッパ沿岸、東南アジアなどで漁獲された、ヨーロッパコウイカなどの大型種を輸入したものなんです。
本来、日本で「モンゴウイカ(紋甲烏賊)」と呼ばれていたのは、標準和名「カミナリイカ」という日本固有の立派なイカでした。背中にコーヒー豆や唇のような独特の楕円形の紋様(斑紋)があることからその名が付き、西日本を中心に関西の割烹などで高級食材として珍重されてきました。しかし、1970年代以降、日本の外食産業が急成長し、イカの需要が爆発的に高まったことで状況が一変します。
需要を満たすため、水産会社は海外の海から、日本のカミナリイカに似た巨大なコウイカの仲間を大量に輸入するようになりました。これらの輸入イカは胴体の長さが30センチを超えるほど巨大で、肉厚な点がカミナリイカにそっくりでした。そこで、消費者に親しみを持ってもらうために、かつてからあった「モンゴウイカ」という高級感のある名前を借りて(代替名として)市場に流通させたのです。その結果、安価で身が分厚い「輸入モンゴウイカ」が一般社会に完全に定着してしまいました。
現代では主客が完全に逆転してしまい、本来のモンゴウイカである国産のカミナリイカの方が、区別するためにわざわざ「本モンゴウ」や「カミナリイカ」と表記されて細々と売られているという、少し切ない状況になっています。とはいえ、輸入モンゴウイカのおかげで、私たちは安くて美味しいイカを安定して食べられているのも事実ですね。
パスタや炒め物には肉厚モンゴウイカ

「それなら、スーパーに売っている輸入のモンゴウイカは美味しくないの?」と心配になるかもしれませんが、全くそんなことはありませんのでご安心ください!ただ、コウイカ(スミイカ)とは筋肉の構造や水分の含有量が違うため、得意な料理のジャンルが明確に異なるだけなんです。輸入モンゴウイカがその真価を圧倒的に発揮するのは、ズバリ「加熱調理」です。
巨大に成長する輸入モンゴウイカの身は非常に分厚く、コウイカに比べて水分をやや多く含んでいます。そのため、生のままお刺身で食べると、歯切れの良さよりも「ねっとり・もっちり」とした粘り気が前面に出てしまい、人によっては少しクドく感じてしまうことがあります。しかし、この分厚い身に熱を加えると魔法がかかります。強火で炒めたり、高温の油でサッと揚げたりすると、表面は瞬時に熱でコーティングされますが、身が厚いおかげで中心部への熱の伝わりが緩やかになります。結果として、中の水分が逃げずに保たれ、驚くほどふっくらとした、柔らかくてジューシーな食感に仕上がるんです。
中華料理の八宝菜や、ニンニクを効かせたペペロンチーノ、トマトソースで煮込むイタリアンなど、味の濃いソースと合わせても、モンゴウイカの強い存在感は決して負けません。ちなみに、我が家はみんな卵が大好き(笑)なので、モンゴウイカに細かく切れ目を入れて、ふんわりとした半熟卵と一緒に中華スープの素でサッと炒めるのが定番です。これなら小さいお子さんでも噛み切りやすく、家族みんなで大満足できるメインのおかずになりますよ。
モンゴウイカやコウイカ、スミイカの違いと調理
ここまで、種類ごとの味の特徴や得意な料理の違いについて解説してきました。ここからは、皆さんが実際にキッチンでイカを調理する際に直面する「リアルな疑問や不安」にお答えしていきますね。寄生虫のアニサキスに対する不安や、台所が真っ黒になる墨袋の攻略法、そして私の得意な揚げ物のコツまで、実用的な情報をたっぷりお伝えします。
底生性のコウイカ類はアニサキスが少なめ

スーパーの鮮魚コーナーで生のイカを手に取ったとき、お客さんから最も多く寄せられる質問が「アニサキスは大丈夫ですか?」というものです。近年、ニュースなどでも取り上げられることが多く、ご自宅で魚介類を調理する機会が多い方にとって、寄生虫のリスクは常に気になるテーマですよね。
結論から申し上げますと、コウイカやモンゴウイカをはじめとするコウイカ科のイカたちは、海を泳ぎ回るスルメイカなどのツツイカ類と比較して、アニサキスが寄生している確率は生物学的にかなり低いとされています。これには、彼らの生息域と「何を食べて生きているか(食性)」が深く関係しています。アニサキスは本来、クジラなどの海棲哺乳類のお腹の中にいて、その卵が海に放出された後、オキアミなどの小さなプランクトンに取り込まれ、それを食べる魚やイカへと食物連鎖を通じて移動していきます。
スルメイカは外洋の中層を大群で猛スピードで泳ぎ回り、アニサキスを持ったオキアミや小魚を貪欲にバクバク食べるため、感染経路のど真ん中にいます。一方で、コウイカ類は水深の浅い海底付近でじっと身を潜めて暮らす「底生性」の生き物です。海底を這い回るカニやエビなどを主食としているため、外洋性のアニサキスを体内に取り込む確率が自然と低くなる構造になっているんです。
ただし、確率が低いからといって「リスクが完全にゼロである」と断言することはできません。天然の海産物である以上、食物連鎖の交差によって稀にアニサキスが迷い込んでいる個体が見つかることは事実です。鮮魚のコウイカをお刺身で食べる際は、内臓を傷つけずに取り除き、身の表面や内部に白い糸ミミズのようなものがいないか明るい場所でしっかり目視確認してください。さらに、表面に細かく隠し包丁を入れることで、万が一アニサキスがいても物理的に切断できるため安全性が格段に高まります。
※数値やデータはあくまで一般的な目安です。健康や安全に関する正確な情報は公式サイトをご確認いただき、最終的な判断は専門家にご相談ください。
輸入モンゴウイカは冷凍処理でリスク皆無
鮮魚のコウイカについては目視と包丁での対策が必要ですが、スーパーの店頭に並んでいる「輸入モンゴウイカ(解凍品や冷凍ブロック)」に関しては、全く別の理由で圧倒的な安全性が担保されています。むしろ、アニサキスが怖いという方にこそ、この輸入モンゴウイカを強くおすすめしたい理由があります。
アフリカやヨーロッパの海で獲れたモンゴウイカは、日本へ運ぶ長距離輸送に耐えるため、漁獲後すぐに巨大な工場船や現地の加工施設でカチンコチンに急速凍結されます。この時、確実に中心部までマイナス20度以下に冷却され、24時間以上(実際には船に揺られている間、長期間にわたって)徹底的な冷凍処理が施されています。
この「マイナス20度以下で24時間以上」という冷凍条件は、日本の食品衛生法に基づく基準であり、アニサキスを完全に死滅させるための確実な方法です。(出典:厚生労働省『アニサキスによる食中毒を予防しましょう』)
つまり、スーパーで売られている解凍モンゴウイカは、この厳しい冷凍プロセスをすでに通過しているため、解凍後に万が一アニサキスの死骸が残っていたとしても、それを食べて食中毒を起こすリスクは事実上皆無となっています。生焼けが心配な炒め物や、お子様と一緒に作るお料理などでも、寄生虫の恐怖に怯えることなく、純粋にお料理を楽しめるのが輸入モンゴウイカの素晴らしいメリットですね。
捌き方の難所である巨大な墨袋に注意
もし、運良く丸ごとのコウイカやカミナリイカを手に入れた場合、ご自宅で捌く際に一つだけ絶対に注意していただきたい最大の難所があります。それが、スミイカの語源にもなっている「巨大な墨袋(墨汁嚢)」の摘出です。他のイカを捌き慣れている方でも、コウイカの墨袋の恐ろしさを舐めてかかると、キッチンが取り返しのつかない大惨事に見舞われます。
コウイカの墨袋は、外套膜(胴体)の内部、内臓のすぐ下で直腸に沿うような位置にドーンと鎮座しています。しかも、たっぷりと墨を蓄えているにもかかわらず、その表面を覆っている皮膜が信じられないほど薄くて脆いんです。魚を捌くときのように、お腹側から包丁をグサッと深く入れてしまうと、刃先が簡単に内臓を突き抜けて墨袋を破ってしまいます。一度破裂すると、粘り気の強い真っ黒な墨が溢れ出し、純白のイカの身はもちろん、まな板も、皆さんの手も、最悪の場合はエプロンや壁まで漆黒に染まり、水で洗ってもなかなか落ちず風味も損なわれてしまいます。
この大惨事を防ぐための賢い捌き方をお伝えしますね。ポイントは「お腹から切らないこと」です。まず、胴体の背中側(硬い舟形の甲羅が入っている方)の皮に、縦に一本浅く包丁で切れ目を入れます。そこから指を入れて、先に邪魔な石灰質の甲羅をズルッと抜き取ってしまいましょう。甲羅がなくなって柔らかくなったら、胴体の中に指を差し込み、頭部と内臓の塊を傷つけないようにゆっくりと引き抜きます(筒抜きという手法です)。内臓が無事に外に出たら、墨袋の根本の管を指でそっとつまんで、破らないように慎重に取り除いてください。これだけで、キッチンの平和は守られますよ!
釣りやエギングで狙う底生性イカの魅力

美味しいイカはスーパーで買うのも良いですが、休日のレジャーとして自分で釣りに出かけてみるのも格別な楽しみ方です。近年、海釣りファンの間で「エギ(餌木)」という日本古来のルアーを使った「エギング」が爆発的な人気を集めていますが、実はコウイカやモンゴウイカ(カミナリイカ)は、身近な堤防や漁港から手軽に狙える素晴らしいターゲットなんです。
ただ、エギングの王道ターゲットであるアオリイカを狙うときと同じ釣り方をしていては、コウイカはなかなか釣れません。ここでも、彼らが「底生性(海底の近くで暮らしている)」であるという生態学的な特徴が釣果を大きく左右します。中層をスイスイ泳ぐアオリイカを狙う場合は、竿を大きくシャクってエギを左右に激しくダート(跳ねさせる)させ、視覚的に猛アピールするのが基本です。しかし、泳ぎがあまり得意ではないコウイカ類にこれをやると、ルアーの動きに追いつけず諦めてしまいます。
コウイカ類を釣るための絶対条件は、「エギを確実に海底(ボトム)に着底させること」です。海底の砂を巻き上げるようにズルズルとゆっくり引きずる(ズル引き)か、ボトム付近で小さくチョンチョンと跳ねさせては、長めに動きを止める(ステイ)アクションが極めて有効です。アタリ(魚信)の出方も独特で、魚のようにブルブル引くことは少なく、エギを長い腕で抱き込んでその場に居座るため、「竿先が急に重くなった」「海藻が引っかかったかな?」というようなジワッとした重みを感じることが多いです。釣り上げるとプシュッと大量の墨を吐くので、お気に入りの服が汚れないように立ち位置には十分気をつけてくださいね。
低温の140から150度で揚げるフライや天ぷらも絶品

肉厚で加熱しても固くなりにくいモンゴウイカを手に入れたら、ぜひ試していただきたいのがイカフライや天ぷらです。お惣菜コーナーで買うのも美味しいですが、お家で揚げたてをサクッと頬張る幸せは格別ですよね。ただ、「イカを揚げるのは油がバチバチ跳ねて爆発するから怖い…」と敬遠している方も多いのではないでしょうか。
私は料理のプロではなく、ただの料理好きに過ぎないのですが、イカフライを絶対に失敗させない、私なりの強いこだわりがあります。それは、「油の温度を140度から160度くらいの低めの温度に保って、じっくりと揚げること」です。イカが爆発して油が跳ねる原因は、イカの身の中に含まれる水分と、加熱によって急激に縮む強靭な筋肉繊維にあります。高温の油にいきなり入れると、表面が一気に硬直して内部の水分が行き場を失い、皮を突き破って水蒸気爆発を起こしてしまうんです。
爆発を防ぐための具体的な手順はこうです。まず、イカの表面にある薄皮をキッチンペーパーなどで丁寧に剥ぎ取ります。次に、身の表面に格子状の浅い切れ目を入れ、水気を完璧に拭き取ります。小麦粉を薄くはたき、溶き卵、パン粉の順に衣をつけたら、140度〜150度程度の低めの油にそっと投入します。高温で急激に縮ませるのではなく、低温の油でじんわりと熱を伝えていくことで、油跳ねのリスクを最小限に抑えつつ、モンゴウイカの分厚い身を驚くほどふっくら、柔らかく仕上げることができます。最後にきつね色になるまで少しだけ火を強めてカラッとさせ、自家製のタルタルソースやシンプルなお塩でいただけば、もう最高のご馳走ですよ。
イカスミパスタはモンゴウイカでも作れる?

休日のランチに本格的なイカスミパスタを作ってみたい。でも、レシピ本やネットの料理サイトには「新鮮なスミイカを用意します」と書いてあるのに、今日の鮮魚コーナーには丸ごとの「モンゴウイカ」しか並んでいない…。これじゃ墨が取れないのかな、味が違うのかな、とスーパーの売り場でスマホを片手に立ち止まって悩んでいませんか?
鮮魚コーナーでお客さんの様子を見ていると、まさにこういったご相談をよくお受けします。結論からお伝えしますね。目の前にあるその丸ごとのモンゴウイカで、全く問題ありません!むしろ、ボリューム満点のイカスミパスタを作るなら大正解の選択かなと思います。
スミイカ(コウイカ)が大量の墨を持つことはよく知られていますが、実はモンゴウイカも同じコウイカの仲間なので、体の中には立派で巨大な墨袋がしっかりと入っています。さらに言えば、モンゴウイカの方が基本的には体が大きく成長するため、一杯のイカから取れる墨の量も多くて、たっぷりソースを作れるのでお得だったりするんです。イカの墨にはアミノ酸や多糖類といった濃厚な旨み成分がたっぷりと含まれており、まさに「究極の天然調味料」ですね。イタリア料理のネーロ・ディ・セッピア(イカスミパスタ)を作る上で、モンゴウイカの墨は文句なしの主役を張ってくれます。
調理のステップも決して難しくありません。先ほどご紹介した「筒抜き」の方法で内臓から墨袋を無事に摘出できたら、小さな器の中で墨袋を破り、少量の白ワインや水で溶きのばしておきます。フライパンでオリーブオイル、ニンニク、みじん切りの玉ねぎや香味野菜をじっくりと炒め、トマトペーストと細かく切ったモンゴウイカの身を加えます。そこに先ほど溶いた漆黒のイカ墨を投入して軽く煮詰めれば、磯の香りが凝縮された絶品ソースの完成です。
そして、ここからがモンゴウイカ最大の強みです。モンゴウイカの身はスミイカよりも分厚いため、加熱しても縮みきらず、ゴロゴロとした存在感がしっかりと残ります。濃厚でパンチのあるイカスミソースに絡めても、イカの身自体の旨みや食感が全く負けないんです。
私は料理のプロというわけではなく、ただ毎日にキッチンに立つのが好きなだけなのですが、この方法ならお家でレストラン顔負けの味が楽しめますよ。レシピの言葉に縛られすぎず、目の前にある食材の特性を理解して工夫するだけで、食卓はもっと豊かで楽しいものになります。売り場で丸ごとのモンゴウイカを見つけたら、ぜひ迷わずカゴに入れて、極上のパスタに挑戦してみてくださいね。
モンゴウイカとコウイカ、スミイカの違いまとめ
いかがでしたでしょうか。今回は「モンゴウイカ」「コウイカ」「スミイカ」という、売り場でよく似ていて混同されがちな呼称について、その違いや歴史的な背景、そしてスーパーの鮮魚コーナーで賢く選ぶためのポイントを詳しく解説してきました。この記事をここまで読んでいただいたことで、実はもう一つ「カミナリイカ」という重要な存在がいることにもお気づきいただけたかなと思います。最後に、もう一度全体の内容をカミナリイカも含めてわかりやすく整理しておきましょう。
まず、一番の基本として、スミイカという独立した種類のイカはおらず、それは「コウイカ」の関東地方(特に江戸前寿司の文化圏)における呼び名でした。このコウイカ(スミイカ)は、サクッとした軽快な歯切れと上品で繊細な甘みが持ち味です。鮮度の良いものを手に入れたら、まずはお刺身やお寿司として生のまま味わうのが最も贅沢で美味しい食べ方ですね。
そして、名前の混乱を招いていた最大の原因が「モンゴウイカ」の二面性です。本来、日本の食文化においてモンゴウイカと呼ばれていたのは、背中にコーヒー豆のような独特の紋様を持つ「カミナリイカ」のことでした。こちらは西日本を中心に珍重される高級品で、非常に肉厚でありながら強い甘みを持ち、お刺身で食べると極上のねっとり感を楽しめます。現在では漁獲量が減り、「本モンゴウ」といった名前で高く取引されています。
一方で、現代のスーパーで一般的に「モンゴウイカ」という名前で売られているパックの多くは、本来のカミナリイカではなく、アフリカやヨーロッパから輸入された大型の別種(ヨーロッパコウイカなど)です。こちらは加熱調理をすることで驚くほどふっくらと柔らかくなるため、炒め物やフライ、煮込み料理には無類の強さを発揮します。
| 一般的な呼称 | 実際の正体(標準和名など) | 身の特徴とおすすめの調理法 | アニサキス・食中毒リスクへの対策 |
|---|---|---|---|
| スミイカ (コウイカ) | 日本沿岸の固有種「コウイカ」 ※両者は全く同じイカ | 繊維が細かくサクッとした食感と甘み。 お刺身、お寿司などの生食に最適。 | 底生性のため比較的リスクは低いが、 目視確認と細かい隠し包丁で安全確保を。 |
| モンゴウイカ (本来の姿) | 日本近海に生息する「カミナリイカ」 ※現在は高級品として流通 | 肉厚で強い甘みがあり、ねっとりした食感。 高級なお刺身や、隠し包丁を入れた生食に。 | コウイカ同様リスクは低いものの、 天然の生鮮品は目視と包丁での対策が必須。 |
| モンゴウイカ (現代の流通品) | アフリカ等で獲れたヨーロッパコウイカ等 ※主に冷凍・解凍ブロックで流通 | 非常に肉厚。加熱しても硬くなりにくい。 天ぷら、中華炒め、パスタなどに最適。 | 輸入過程で確実に冷凍処理されるため、 アニサキスによる食中毒リスクは事実上皆無。 |
高級なお寿司屋さんで職人さんが握る極上の新イカ(スミイカ)や、特別な日に奮発して買うカミナリイカ(本モンゴウ)を堪能するのも素晴らしい体験です。でも、毎日のご家庭の食卓を支え、彩ってくれるのは、やはり手軽な値段で買えて加熱料理に強い輸入のモンゴウイカですよね。
私は料理のプロというわけではありませんが、それぞれのイカの個性を知って、フライにするなら140度から160度の低めの温度でじっくり揚げるなど、ちょっとした工夫をするだけで毎日のご飯作りが劇的に楽しくなると実感しています。
どれが一番優れているというわけではなく、「適材適所」で使い分けることが、食材の命を美味しくいただくための最大の秘訣かなと思います。次回スーパーの鮮魚コーナーでお買い物をされる際は、ぜひこの記事の表を思い出していただき、自信を持って美味しいイカ料理をご自宅で楽しんでみてくださいね!