釣りや鮮魚店で見かけるメゴチとマゴチ。
名前は似ていますが、マゴチとメゴチの違いを正確に説明できる人は少ないかもしれません。
この記事では、両者の基本的な見分け方から、それぞれが何科の魚なのか、旬の季節や味の違いについて詳しく解説します。
さらに、メゴチとハゼの違いや、ワニゴチとマゴチの違いといった、よく似た魚との比較も行います。
メゴチ特有のヌルヌルを酢で取る捌き方のコツから、小さいサイズの食べ方、刺身や天ぷら、骨付き唐揚げといった絶品の食べ方まで網羅。
関西地方で「がっちょ」と呼ばれるメゴチの郷土料理にも触れながら、メゴチとワニゴチ、マゴチそれぞれの魅力を余すところなくお伝えします。
この記事でわかること
- メゴチとマゴチの明確な見分け方
- メゴチ特有の下処理や捌き方のコツ
- 天ぷらや唐揚げなどメゴチの絶品レシピ
- ハゼやワニゴチなど似た魚との違い
メゴチとは?マゴチとの違いを解説
- 釣り人が言うメゴチは何科の魚?
- マゴチとの簡単な見分け方
- よく似たハゼとの違いも解説
- ワニゴチやマゴチとの違いを比較
釣り人が言うメゴチは何科の魚?
一般的に、釣り人や市場関係者が「メゴチ」と呼ぶ魚は、実は標準和名が「メゴチ」ではないケースがほとんどです。
多くの場合、スズキ目ネズッポ科に属する「ネズミゴチ」やその仲間を指しています。
一方で、図鑑などに載っている標準和名「メゴチ」は、カサゴ目コチ科に属する魚で、ネズッポ科の魚とは全く別の種類です。
非常に紛らわしいですが、この記事では、一般的に広く認知されている「ネズミゴチ」を「メゴチ」として解説していきます。
項目 | 通称「メゴチ」 (ネズミゴチなど) | 標準和名「メゴチ」 |
---|---|---|
科 | スズキ目 ネズッポ科 | カサゴ目 コチ科 |
特徴 | 体表にヌメリが多く、口が小さい。キス釣りの外道としてよく知られる。 | コチの仲間で、体は平たく口が大きい。 |
このように、名前は同じでも生物学的には全く異なる魚です。
この違いを理解しておくことが、メゴチとマゴチを見分ける第一歩となります。
マゴチとの簡単な見分け方
メゴチ(ネズミゴチ)とマゴチを見分けるのは、ポイントさえ押さえれば非常に簡単です。
結論から言うと、「大きさ」「口の形」「体表の質感」の3点に注目すれば、まず間違うことはありません。
マゴチは全長50cmを超え、時には1m近くにもなる大型魚ですが、メゴチは大きくても20cm程度と小型です。
また、マゴチはフィッシュイーターらしく大きな口をしていますが、メゴチは海底のゴカイなどをついばむように食べるため、愛嬌のある「おちょぼ口」をしています。
特徴 | メゴチ(ネズミゴチ) | マゴチ |
---|---|---|
最大サイズ | 約25cm | 約70cm(稀に1m) |
口の形 | 小さい(おちょぼ口) | 大きい |
体表 | ヌルヌルしている | ザラザラしている |
主な生息地 | 内湾の砂泥底 | 沿岸の砂泥底 |
釣れた魚が小さくてヌルヌルしていて、口がちょこんと小さかったらメゴチ、大きくてザラザラしていて、口が大きければマゴチ、と覚えておくと分かりやすいですよ!
これらの特徴は一目瞭然なので、実物を見ればすぐに判別がつくでしょう。
よく似たハゼとの違いも解説
メゴチは、同じく砂泥底に生息するハゼの仲間と間違われることもあります。
しかし、これも簡単なポイントで見分けることが可能です。
最も分かりやすい違いは「腹ビレ」の形です。
多くのハゼ科の魚は、左右の腹ビレが癒合して吸盤状になっているのが特徴です。
これは、岩や海底に体を固定するための機能です。
一方、メゴチ(ネズッポ科)の腹ビレは左右に分かれており、吸盤状にはなっていません。
メゴチとハゼの見分け方
- メゴチ(ネズッポ科):腹ビレは左右に分かれている。
- ハゼ科:左右の腹ビレがくっついて吸盤のようになっている。
また、背ビレにも違いがあります。
メゴチは第一背ビレと第二背ビレがはっきりと分かれていますが、ハゼは繋がっているように見える種類が多いです。
釣れた際に「これはハゼかな?」と思ったら、お腹側のヒレを確認してみてください。
ワニゴチやマゴチとの違いを比較
マゴチには、さらによく似た魚として「ワニゴチ」が存在します。
こちらはマゴチと同じコチ科の魚で、メゴチよりも見分けるのが少し難しいかもしれません。
マゴチとワニゴチの最も確実な見分け方は、「目の上の棘(とげ)」です。
ワニゴチは目のすぐ上に短い棘が1本だけありますが、マゴチには棘がありません。
また、ワニゴチの方が下アゴがより突き出ており、名前の通りワニのような厳つい顔つきをしています。
項目 | マゴチ | ワニゴチ | メゴチ(ネズミゴチ) |
---|---|---|---|
科 | コチ科 | コチ科 | ネズッポ科 |
目の上の棘 | ない | ある(1本) | ない |
口 | 大きい | 大きい(下アゴがより突出) | 小さい |
体表 | ザラザラ | ザラザラ | ヌルヌル |
ワニゴチもマゴチと同様に高級魚として扱われ、美味しく食べられます。
メゴチ(ネズミゴチ)は科レベルで違うため、口の小ささとヌメリに注目すれば、これらの魚と間違うことはないでしょう。
メゴチの絶品料理とマゴチとの味の違い

- メゴチの旬の季節とマゴチとの味
- ヌルヌルは酢で取る捌き方
- 天ぷらや刺身など定番の食べ方
- 小さいなら骨付き唐揚げの食べ方
- 泉州名物「がっちょ」の唐揚げ
メゴチの旬の季節とマゴチとの味
メゴチとマゴチは、旬の時期や味わいにもそれぞれ特徴があります。
マゴチの旬は夏で、「照りゴチ」とも呼ばれます。産卵に向けて栄養を蓄える初夏から夏にかけて脂が乗り、その美味しさはフグに匹敵するとされ「夏フグ」の異名を持つほどです。
身はしっかりとした弾力のある白身で、刺身や洗い(薄造り)にすると、コリコリとした食感と上品な旨味を楽しめます。
一方、メゴチ(ネズミゴチ)は春から秋にかけてが主なシーズンですが、真冬以外は味が落ちにくく、ほぼ通年美味しく食べられる魚です。
身は水分が多く非常に柔らかく、加熱するとフワフワの食感になります。
クセがなく、淡白ながらもしっかりとした甘みと旨味があるのが特徴です。
味と食感のまとめ
- メゴチ(ネズミゴチ):柔らかくフワフワした食感。上品な甘みと旨味があり、特に天ぷらに最適。
- マゴチ:弾力のあるコリコリした食感。フグに似た高級な旨味があり、刺身が絶品。
このように、両者は全く異なる個性を持っており、それぞれの特徴に合った調理法で味わうのがおすすめです。
ヌルヌルを酢で取る捌き方
メゴチを調理する上で最大の関門が、体表を覆う独特の「ヌメリ」です。
このヌメリは臭みの原因にもなるため、下処理でしっかり取り除くことが美味しく食べるための重要なポイントになります。
メゴチのヌメリ取り
ヌメリ取りには、塩や酢を使うのが効果的です。
ボウルにメゴチを入れ、粗塩を振って優しく揉む(塩もみ)と、ヌメリが面白いように取れていきます。
または、お酢を大さじ2杯ほど入れた酢水の中で軽く洗う方法も、臭み取りと同時に行えるのでおすすめです。
ヌメリを取った後の捌き方は、天ぷらなどにする場合、「松葉おろし」という方法が一般的です。
メゴチの簡単な捌き方(皮むき)
実は、もっと簡単な方法もあります。それは、頭と内臓と一緒に皮を剥いてしまう方法です。
- 胸ビレの後ろから包丁を入れ、中骨まで切り込みを入れる(頭は落とさない)。
- 魚を裏返し、包丁の刃で中骨を押さえる。
- 頭の部分を掴み、尾の方向へゆっくりと引っ張る。
こうすると、頭と内臓、そして皮がズルっと一緒に剥けて、身だけが綺麗に残ります。この方法なら、初心者でも簡単に下処理が完了します。
ただ、天ぷらや唐揚げにする際に、皮付きの方が美味しいと!という方は「松葉おろし」がオススメです。
エラの棘に注意!
メゴチもマゴチもエラ蓋に鋭い棘があります。
素手で掴むと怪我をする恐れがあるため、捌く際はフィッシュグリップを使ったり、事前にキッチンバサミで棘を切り落としたりすると安全です。
天ぷらや刺身など定番の食べ方

メゴチの最も代表的で美味しい食べ方は、なんといっても「天ぷら」です。
古くから江戸前天ぷらの高級ネタとして珍重されており、その地位はキスやアナゴと並ぶほどです。
適切に下処理されたメゴチを天ぷらにすると、衣はサクサク、中の身は驚くほどフワフワに仕上がります。
水分が多い身質が、揚げることで絶妙な食感を生み出すのです。
上品な白身の甘みが口いっぱいに広がり、一度食べればヤミツキになること間違いありません。
塩でシンプルにいただくのがおすすめです。
また、鮮度が抜群であれば「刺身」も絶品です。
丁寧に皮を引いて捌いた身は、美しい透明感があり、見た目にも食欲をそそります。
食感は柔らかく、優しい甘みと旨味が感じられます。
ただし、メゴチは鮮度落ちが早い魚なので、刺身で食べるのは釣り人の特権と言えるでしょう。
小さいなら骨付き唐揚げの食べ方

数釣りができて小さいサイズのメゴチがたくさん手に入った場合には、「骨付きの唐揚げ」がおすすめです。
じっくりと二度揚げすることで、骨までサクサクと食べられる絶品おつまみになります。
調理のポイント

- 頭と内臓を取り除き、塩水でよく洗って水気を拭き取る。
- 塩コショウや醤油、生姜などで軽く下味をつけ、片栗粉を薄くまぶす。
- まず160℃程度の低温の油で、5〜6分じっくりと揚げる。
- 一度取り出して油の温度を180℃に上げ、再度1〜2分揚げて衣をカリッとさせる。
二度揚げするのが、骨まで美味しく食べるための最大のコツです。
低温でじっくり揚げることで骨に火が通り、最後の高温で水分を飛ばしてカリッと仕上げます。レモンを絞って食べると最高ですよ!
この調理法なら、小さなメゴチも余すところなく美味しくいただけます。
泉州名物「がっちょ」の唐揚げ
関西、特に大阪の泉州(せんしゅう)地域では、メゴチ(ネズッポ科)のことを親しみを込めて「がっちょ」と呼びます。
そして、この「がっちょの唐揚げ」は、地域のソウルフードとして古くから愛され続けている郷土料理です。
泉州地域は底引き網漁が盛んで、そこで獲れるがっちょは地元の人々にとって非常に身近な魚でした。
醤油ベースの甘辛いタレで下味をつけたがっちょを唐揚げにしたものは、ご飯のおかずにも、お酒の肴にもぴったりな一品です。
地域の味
現在では、泉州地域の飲食店やお惣菜屋さんで定番メニューとして提供されているほか、お土産物としてレトルトパックなどでも販売されています。
もし泉州を訪れる機会があれば、ぜひ本場の「がっちょの唐揚げ」を味わってみてください。
キス釣りの「外道」として扱われがちなメゴチですが、地域によっては主役級の食材として食文化に深く根付いているのです。
メゴチとマゴチの違いと見分け方を知り美味しく食べよう
この記事では、メゴチとマゴチの違いや、それぞれの特徴、美味しい食べ方について解説しました。
最後に、記事の要点をリストでまとめます。
- 釣り人が言うメゴチは主にスズキ目ネズッポ科の魚
- 標準和名メゴチはカサゴ目コチ科でマゴチに近い仲間
- メゴチとマゴチの最大の違いは大きさと口の形と体表のヌメリ
- メゴチは小さくおちょぼ口でヌルヌルしている
- マゴチは大きく口が裂けザラザラした体表を持つ
- メゴチとハゼは腹ビレが吸盤状かどうかで見分けられる
- マゴチとワニゴチは目の上の棘の有無で区別できる
- マゴチの旬は夏で「夏フグ」と呼ばれる高級魚
- メゴチは通年味が良く特に天ぷらが絶品
- メゴチのヌメリは塩や酢を使うと簡単に取れる
- 捌く際はエラ蓋の棘に注意が必要
- メゴチの食べ方の王道はフワフワ食感の天ぷら
- 小さいメゴチは骨まで食べられる唐揚げがおすすめ
- 大阪泉州ではメゴチを「がっちょ」と呼び唐揚げが郷土料理
- 両者の違いを理解しそれぞれの美味しさを楽しもう