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サゴシはまずい?旬と食べ方で劇的に変わる絶品レシピ

「サゴシはまずい」「特有の青魚臭が苦手で、釣れても持ち帰らない」といった声を耳にし、知らず知らずのうちに敬遠してしまっている方も多いのではないでしょうか。

確かに、サゴシは締め方や捌き方といった下処理を誤ると、その評判通りの結果になってしまうことがある繊細な魚です。

また、成長するとサワラと呼ばれる事実や、スズキ目サバ科という分類、さらにはカミソリのような鋭い歯や刺激に弱い鱗といった詳しい生態まで知る機会は少ないかもしれません。しかし、正しい知識を身につけ、ほんの少しの手間をかけることで、その評価は180度覆ります。

サゴシが獲れる地域と最高の旬を理解し、適切な締め方を実践すれば、たとえ野締めであっても朝獲れの新鮮なものであれば、臭みとは無縁の最高の食材へと昇華するのです。

この記事では、食中毒のリスクがあるアニサキスへの具体的な対策から、誰でも実践できる安全で美味しい食べ方までを網羅的に徹底解説します。

「サゴシの刺身はまずい」という根強い常識を覆す、香ばしい皮目の炙りをはじめ、家庭料理の定番である煮つけ、照り焼き、塩焼き、天ぷら、そして意外な相性の良さを見せる洋風のムニエルまで、サゴシが持つ本来のポテンシャルを最大限に引き出すための絶品レシピを余すことなくご紹介します。

この記事で分かること

サゴシが「まずい」「臭い」と評価されてしまう根本的な理由と科学的背景

魚の価値を左右する、鮮度を保つための正しい締め方と捌き方の詳細な手順

初心者から上級者まで満足させる、サゴシの魅力を最大限に引き出す絶品レシピの数々

安心して食卓に並べるために不可欠な、アニサキス食中毒の予防策と注意点

「サゴシ まずい」は誤解!原因と特徴を解説

  • そもそもサゴシとは?サワラとの違いと分類
  • 歯が鋭い?鱗などサゴシの生態的特徴
  • 獲れる地域と美味しくなる旬の時期
  • 臭いと言われる原因は締め方にあり
  • 正しい捌き方とアニサキスへの注意点

そもそもサゴシとは?サワラとの違いと分類

サゴシが「まずい」というイメージを払拭する前に、まずはこの魚の正体について深く理解することが不可欠です。驚かれるかもしれませんが、実はサゴシとサワラは生物学的に全く同じ魚であり、成長段階に応じて呼び名が変わる、いわゆる出世魚の一種なのです。同じく出世魚として有名なブリの成長については、こちらのツバスの記事で詳しく解説しています。

分類学的には、スズキ目サバ科サワラ属に属する海水魚で、正式な標準和名は「サワラ」です。マグロやカツオ、サバなどと同じサバ科の仲間であり、高速で泳ぐための筋肉が発達しています。そのため、身の色は白身魚のように見えますが、筋肉中に酸素を供給するミオグロビンという色素たんぱく質を多く含むため、栄養学的には赤身魚に分類されます。

「サワラ」という名前の由来は、その体型にあり、非常に細長いことから「狭い腹」を意味する「狭腹(さはら)」が転じたという説が有力です。「サゴシ」という呼び名は、成魚であるサワラに至る前の、比較的小さな若魚の段階を指す通称です。

出世魚の呼び名は地域文化と密接に関わっており、場所によってサイズ区分や名称が異なります。ご自身の地域ではどのように呼ばれているか、魚屋さんや釣り好きな方に尋ねてみると、新たな発見があるかもしれませんね。

特にサイズによる呼び分けは関東と関西で顕著な違いが見られます。以下にその代表的な例をまとめました。

地域~50cm前後50~70cm前後70cm以上
関東地方サゴシ(またはサゴチ)サワラ
関西地方サゴシ(またはサゴチ)ヤナギ(ナギ)サワラ

味わいの面でも、成長段階によって明確な違いがあります。若魚であるサゴシは、成魚のサワラに比べて脂肪分が少なく、非常に淡白であっさりとした上品な味わいが特徴です。一方、大きく成長し、特に産卵期を控えた冬場のサワラは「寒ザワラ」として珍重され、全身にたっぷりと脂を蓄え、濃厚な旨味を楽しむことができます。

この脂の量の違いが、「サゴシはサワラに比べて味が落ちる=まずい」というイメージに繋がっている可能性がありますが、それはサゴシの個性を活かしきれていないだけかもしれません。その淡白な身質は、調理法次第でサワラにはない軽やかな美味しさを引き出すことができるのです。

歯が鋭い?鱗などサゴシの生態的特徴

サゴシの生態的な特徴を正しく理解することは、安全な取り扱いはもちろん、調理の手間を省き、その美味しさを最大限に引き出す上で非常に重要です。特に釣り人や料理初心者が注意すべき点がいくつか存在します。

まず最も警戒すべきは、そのカミソリのように鋭い歯です。サゴシは獰猛なフィッシュイーター(魚食魚)で、イワシなどの獲物を確実に捕らえるために、大きく裂けた口には鋭利な歯がずらりと並んでいます。釣り上げたサゴシの口からルアーや針を外す際に、不用意に指を入れると、深刻な裂傷を負う可能性があります。

処置の際には、必ず厚手のグローブを着用の上、フィッシュグリップで口を固定し、ロングノーズプライヤーを使用することを徹底してください。

サゴシのカミソリのような歯は危険ですが、魚の中にはヒレに強力な毒を持つ種類もいます。特にオニカサゴを扱う際は、専門的な知識と最大限の注意が必要です。

釣り人は要注意!通称「サゴシカッター」

サゴシの歯の鋭さは、釣り糸(ライン)をいとも簡単に切断してしまうことから、釣り人の間では「サゴシカッター」の異名で恐れられています。サゴシの群れがいる場所で通常のナイロンやフロロカーボンのリーダーを使用していると、ルアーや仕掛けごと切られてしまう「ラインブレイク」が多発します。

これを防ぐためには、歯が直接当たっても切れないワイヤーリーダーを使用するか、普段より太いショックリーダーを選択するなどの対策が必須です。

一方で、調理する上での大きなメリットとして、サゴシの鱗(うろこ)は非常に細かく、ほとんど気にならないという点が挙げられます。一般的な魚料理で最も手間のかかる工程の一つである「鱗取り」を省略できるため、下処理が格段に楽になります。

包丁の背で軽くこする程度で十分であり、全く処理しなくても食感に影響することはほとんどありません。この手軽さは、サゴシが初心者にもおすすめできる大きな理由です。

また、サゴシはサバ科の魚に共通する特性として、筋肉質でありながら身が非常に柔らかく、物理的な刺激に弱いという繊細さも持ち合わせています。釣り上げた後に強く握ったり、地面に叩きつけたりすると、その衝撃で身の繊維が壊れ、「身割れ」と呼ばれる状態になりやすいです。

身割れを起こすと食感が損なわれるだけでなく、ドリップ(旨味成分を含む水分)が流出しやすくなります。鮮度と味を保つためには、常に優しく丁寧に扱うことを心がけましょう。

獲れる地域と美味しくなる旬の時期

サゴシ(サワラ)は、かつては西日本が主な漁場でしたが、近年では生息域に変化が見られます。北海道南部から九州、東シナ海に至るまで日本近海に広く分布しており、特に福井県、京都府、石川県、島根県といった日本海側の地域で安定した水揚げがあります。また、瀬戸内海も古くからの重要な産卵場として知られています。

近年、水産庁の報告にもあるように、海水温の上昇などの海洋環境の変化に伴い、サワラの生息域が北上する傾向にあり、これまであまり獲れなかった関東や東北地方の沿岸でも釣果や漁獲の報告が増えています。

「鰆(さわら)」という漢字のイメージから、旬は春と広く認識されていますが、これは産卵のために沿岸に寄り、人々の目に触れる機会が増えることに由来します。実際には、サゴシには味わいが大きく異なる2回の旬が存在します。

知っておきたいサゴシの「ダブルシーズン」

  1. 冬(12月~2月):脂を味わう「寒サゴシ」の旬
    この時期は、春の産卵に向けて体に栄養をたっぷりと蓄えるため、一年で最も脂が乗ります。「寒ザワラ」「寒サゴシ」と呼ばれ、その身はこってりと濃厚な旨味を持ちます。餌となるカタクチイワシなども冬は脂が乗っているため、それを捕食するサゴシの味も格別です。刺身やたたき(炙り)で、とろけるような食感と風味を味わうなら、間違いなくこの時期がベストシーズンです。
  2. 春(5月~6月):上品な身と卵を楽しむ「春告魚」の旬
    産卵のために瀬戸内海などに大群で押し寄せてくるこの時期は、漁獲量がピークを迎えます。関西地方では、この時期を旬としており、「春告魚(はるつげうお)」として親しまれています。冬に比べて脂肪分は落ち着き、クセのない上品でさっぱりとした味わいになります。また、この時期ならではの楽しみとして、成熟した真子(卵巣)や白子が手に入ることです。これらは煮付けや塩焼きにすると絶品で、身とはまた違った珍味として楽しまれています。

このように、サゴシは季節によって全く異なる魅力を見せてくれる魚です。脂の乗った濃厚な味を求めるなら冬、淡白で上品な味わいや真子・白子を楽しみたいなら春のサゴシを選ぶと良いでしょう。「まずい」という評価は、旬を外した時期の、脂が落ちきった個体を食べた経験から生まれている可能性も否定できません。

臭いと言われる原因は締め方にあり

多くの人が口にする「サゴシは臭い」「まずい」という評価の根本的な原因、その核心は釣り上げた直後の処理、とりわけ「締め方」と「血抜き」の成否にあると言い切れます。

サゴシはマグロやサバと同じサバ科の魚であり、その筋肉には長距離を高速で泳ぐためのエネルギーが満ちています。しかし、このエネルギーは死後、急激な品質劣化を引き起こす原因にもなります。特に、体内に含まれる酵素の働きが活発で、自己消化のスピードが他の魚に比べて非常に速いのです。釣り上げてから適切な処置を施さなければ、血が身に回り、あっという間に特有の生臭さが発生します。

釣り人の間で「サゴシはリリースする」という選択がなされる背景には、この処理の重要性を知っているが故の判断(面倒、または失敗経験)があることが多いのです。しかし、正しい手順さえマスターすれば、誰でも最高の状態で持ち帰ることが可能です。

サゴシの臭いを発生させる主な要因は、以下の3つに集約されます。

サゴシの臭い 3大原因

  • 血液:適切に血抜きが行われないと、血液中の鉄分が酸化し、強い生臭みの元となります。特に血合いの部分は臭いが凝縮しています。
  • 内臓:内臓、特に消化器官には多くの消化酵素が含まれており、魚の死後、これらの酵素が自身の身を溶かし始める(自己消化)ことで、腐敗臭の原因となります。
  • 体表のヌメリ:魚の体表を覆うヌメリ(粘液)は、雑菌の温床です。放置すると雑菌が繁殖し、不快な臭いを発生させます。

これらの臭いの元を、魚が死んで鮮度劣化が本格的に始まる前に、いかに迅速かつ完全に取り除けるか。つまり、サゴシの真価は、釣り上げた後のわずか数分間の「ゴールデンタイム」における一手間によって決まるのです。次のセクションで、その具体的な方法を詳しく見ていきましょう。

「サゴシの価値が締め方で決まるように、魚の処理は味を左右する最も重要な工程です。他の魚の締め方については、タカノハダイの記事でも詳しく解説しています。」

正しい捌き方とアニサキスへの注意点

サゴシを最高の状態で食卓に届けるための下処理は、「締める」「血を抜く」「内臓とエラを取る」という3つのステップが絶対的に重要です。この一連の作業を釣り場で行うだけで、持ち帰った後の味は劇的に向上します。

ステップ1:締め方(脳締め)

まず、釣り上げたサゴシを即座に気絶させ、苦しませずに絶命させます。これにより、魚が暴れて体温が上昇し、身が傷む(身焼け)のを防ぎます。サゴシの眉間の少し上あたりを指で探ると、頭蓋骨が少し凹んでいる部分があります。

そこが脳の位置なので、専用の締めピックやナイフの先端を突き刺し、破壊します。魚の口がガクッと開き、全身が一瞬ビクッと痙攣すれば成功の証です。

ステップ2:血抜き(動脈切断)

脳締めが終わったら、間髪入れずに血抜きに移ります。エラ蓋を大きく開き、エラの付け根部分を繋いでいる膜をナイフやキッチンバサミで切断します。さらに奥にある背骨の下を通る太い動脈(中骨大動脈)までしっかりと切断するのがポイントです。

心臓がまだ動いているため、ポンプの役割で体内の血液が勢いよく排出されます。海水を汲んだバケリに頭から浸けるか、ストリンガーに繋いで海中で数分間泳がせると、効率的に血を抜くことができます。エラが白っぽいピンク色になれば血抜き完了の目安です。

ステップ3:内臓とエラの処理

血抜きが終わったら、腐敗と臭いの元凶となる内臓とエラを完全に取り除きます。可能であれば頭ごと落とし、肛門から腹を裂いて内臓を全て掻き出しましょう。この時、最も重要なのが背骨の下にべったりと付いている血合い(腎臓)の除去です。

ここに臭みが凝縮されているため、包丁でしっかりと切り込みを入れ、古い歯ブラシやササラを使って完全に洗い流します。エラも臭いの元なので、付け根から切り取って除去してください。

食中毒に厳重注意!アニサキス対策の徹底

サゴシをはじめとする多くの海産魚には、寄生虫のアニサキスがいる可能性があります。アニサキスが寄生した魚介類を生で食べると、数時間後に激しい腹痛や嘔吐を伴う食中毒(アニサキス症)を引き起こすことがあります。予防のため、以下の対策を必ず守ってください。

  • 内臓の迅速な除去:アニサキスは主に内臓に寄生していますが、魚の死後、鮮度が落ちると筋肉(身)へ移動する性質があります。食中毒予防の観点からも、内臓は可能な限り早く取り除くことが極めて重要です。
  • 目視での確認:調理の際は、身をよく見て、半透明で白い糸状のアニサキスがいないか入念に確認してください。特に腹身の部分は念入りにチェックしましょう。
  • 加熱または冷凍:アニサキスは熱と低温に弱いです。厚生労働省は、70℃以上での加熱、または-20℃で24時間以上の冷凍を有効な予防法として推奨しています。
    (出典:厚生労働省「アニサキスによる食中毒を予防しましょう」
  • 注意:一般的な料理で使う程度の塩、酢、醤油、ワサビではアニサキスは死滅しません。酢締め(しめ鯖など)で食べる場合も、一度冷凍するなどの対策が必要です。

これらの処理が完了したら、真水ではなく綺麗な海水でさっと洗い、キッチンペーパーなどで水気を徹底的に拭き取ります。魚体が直接氷に触れると氷焼けを起こして味が落ちるため、ビニール袋や新聞紙に包んでから、クーラーボックスでしっかりと冷やして持ち帰りましょう。

「サゴシ まずい」を覆す絶品な美味しい食べ方

  • 「サゴシの刺身はまずい」は鮮度が重要
  • 刺身は香ばしい皮目の炙りがおすすめ
  • 定番の煮つけ・照り焼き・塩焼き・天ぷら
  • 洋風レシピならムニエルが絶品
  • 野締めでも朝獲れなら最高の味に
  • 結論:「サゴシ まずい」は一手間で変わる

「サゴシの刺身はまずい」は鮮度が重要

「サゴシの刺身はまずい」という定説は、多くの釣り人や食通の間で語られてきました。しかし、この評価は特定の条件下でのみ当てはまるものであり、一概に真実とは言えません。まずいと感じられる最大の理由は、繰り返しになりますが、その絶対的な前提条件である「鮮度」が満たされていないケースがほとんどだからです。

前述の通り、サゴシはサバ科の魚の中でも特に鮮度劣化が早い魚です。釣り上げてから適切な血抜きや内臓処理を怠り、時間が経過してしまったサゴシを生で食べれば、ヒスタミンによるピリピリとした刺激や、生臭さを感じてしまうのは当然の結果です。しかし、釣り上げた直後に完璧な処理を施したサゴシの刺身は、これまで抱いていたイメージを根底から覆すほどの、格別な美味しさを秘めています。

成魚のサワラに比べて脂肪分が少ないため、その味わいは非常に淡白で上品。マグロの中トロのように脂の甘みで食べさせるタイプではありませんが、もっちりとした食感の中に感じられる、クセのないさっぱりとした甘みと清らかな旨味は、サゴシならではの唯一無二の魅力です。

むしろ、「サワラは脂が乗りすぎていて、たくさんは食べられない」と感じる方にとっては、サゴシの刺身の方が遥かに食べやすく、飽きがこない味わいだと評価されることも少なくありません。薬味や醤油の風味を邪魔しない、素材そのものの繊細な味を楽しめます。

ただし、どれだけ新鮮であってもアニサキスが寄生しているリスクはゼロではありません。安全を最優先に考えるのであれば、一度-20℃以下で24時間以上冷凍処理を施すのが最も確実な方法です。幸いなことに、サゴシは身質がしっかりしているため、適切に解凍すれば冷凍しても味が落ちにくいという利点があります。安全と美味しさを両立させる賢い選択と言えるでしょう。

刺身は香ばしい皮目の炙りがおすすめ

もし新鮮なサゴシを生で味わう機会に恵まれたなら、ぜひとも試していただきたい究極の食べ方が、皮目だけを香ばしく炙った「焼き霜造り(たたき)」です。

サゴシの美味しさの真髄は、実は身そのものよりも、皮と身の間に凝縮されています。この薄い層には、独特の風味と上質な旨味を伴った脂が含まれており、単に皮を引いて刺身にするだけでは、そのポテンシャルの半分も味わうことができません。そこで、ガスバーナーや強火のグリルを使い、皮目だけを一気に炙るのです。

この「炙る」という一手間が、サゴシに魔法のような変化をもたらします。

炙りがもたらす4つの効果

  • 食感の変化:硬くて食べにくい皮が、熱を加えることで柔らかくなり、パリッとした香ばしい食感に変わります。
  • 旨味の凝縮:加熱によって余分な水分や微かな臭みが飛び、身の旨味が凝縮されます。
  • 風味の昇華:皮下の脂が熱で溶け出し、燻製のような香ばしい薫香と共に、淡白な身全体に豊かな風味をまとわせます。
  • 味のアクセント:炙った皮の香ばしさとほのかな苦味が、さっぱりとした身の味わいに絶妙なアクセントと奥行きを与えます。

家庭でできる「炙り」の簡単手順

三枚におろして腹骨と血合い骨を取り除いたサクの全体に軽く塩を振り、冷蔵庫で10分ほど寝かせます。表面に出てきた水分をキッチンペーパーで丁寧に拭き取った後、皮目を上にして金属製のバットなどに乗せ、ガスバーナーで炙ります。皮に軽く焦げ目がつく程度が目安です。炙り終わったら、すぐに冷凍庫に5分程入れて冷まします。ポン酢に、もみじおろしや刻みネギ、おろしニンニクなどを添えていただくのが定番です。

「サゴシの刺身は水っぽくてまずい」という先入観を持っていた方ほど、この炙り刺身の、香りと食感、そして旨味の共演に衝撃を受けるはずです。新鮮なサゴシが手に入った釣り人だけが味わえる、まさに至高の逸品と言えるでしょう。

定番の煮つけ・照り焼き・塩焼き・天ぷら

サゴシは火を通すことで、その真価をさらに発揮します。加熱により身がふっくらと柔らかくなり、生食とは全く異なる豊かな食感と風味を楽しむことができます。サワラよりも淡白な味わいだからこそ、醤油や味噌、スパイスなどを使った少し濃いめの味付けとの相性が抜群です。ここでは、日本の食卓でおなじみの定番和食レシピをご紹介します。

竜田揚げ・天ぷら

サゴシ料理の中でも、特に子供から大人まで幅広く絶大な人気を誇るのが揚げ物です。醤油、みりん、酒、すりおろした生姜やニンニクでしっかりと下味をつけた切り身に、片栗粉を丁寧にまぶして揚げる竜田揚げは、まさに鉄板の美味しさ。外側の衣はカリッと香ばしく、中の身は驚くほどふわふわでジューシーな食感に仕上がります。

青魚特有の風味が苦手な方でも、下味の効果で全く気にならなくなり、これなら美味しく食べられるという声が非常に多いレシピです。同様に、素材の味を活かす天ぷらもおすすめです。サクッと軽い衣の中で蒸し揚げにされたサゴシは、そのふっくらとした身質と上品な甘みを存分に楽しむことができます。

塩焼き

シンプルな塩焼きは、サゴシ本来の繊細な風味をダイレクトに味わうための調理法です。サゴシは脂肪分が少ないため、ただ焼くだけでは身がパサつきがちです。美味しく仕上げるコツは、焼く20分ほど前に切り身の両面に軽く塩を振り、浸透圧で出てきた余分な水分(臭みの元)をキッチンペーパーで丁寧に拭き取ること。

この一手間で身が締まり、旨味が凝縮されます。サワラの塩焼きに比べるとあっさりとした味わいですが、その分、魚本来の上品な風味をしっかりと感じることができます。大根おろしを添えると、さっぱりといただけます。

照り焼き・煮つけ

醤油とみりん、砂糖をベースにした甘辛いタレで仕上げる照り焼き煮つけは、白いごはんとの相性が最高のおかずです。サゴシの淡白な身に、こってりとしたタレがよく絡み、食欲を強く刺激します。サゴシは身が非常に崩れやすいため、煮つけにする際は、煮汁を先に煮立たせてから魚を入れ、落し蓋をして短時間で一気に煮上げるのがコツです。長時間グラグラ煮込むのは避けましょう。

特に竜田揚げは、サゴシに対する「まずい」というネガティブなイメージをポジティブな驚きに変えるほどの力を持った、まさにキラーコンテンツです。冷めても美味しく、多めに作ってお弁当のおかずにすれば、翌日も幸せな気分を味わえますよ。

洋風レシピならムニエルが絶品

刺身や焼き魚など、和食のイメージが定着しているサゴシですが、実はその淡白でクセのない身質は、バターやオリーブオイル、ハーブなどを使った洋風の調理法とも驚くほど高い親和性を示します。特に、油分を補いながら調理する手法は、サゴシの味わいにコクと深みを与え、新たな魅力を引き出してくれます。

数ある洋風レシピの中でも、家庭で手軽に作れて失敗が少ないのがムニエルです。作り方は非常にシンプル。塩コショウで下味をつけたサゴシの切り身に小麦粉を薄く均一にまぶし、たっぷりのバターを溶かしたフライパンで、皮目からカリッと香ばしく焼き上げるだけです。

このムニエルという調理法には、サゴシを美味しくするための利点が詰まっています。

  • 旨味の閉じ込め:表面を覆う小麦粉の層が壁となり、加熱しても身の内部の水分や旨味成分が外に逃げ出すのを防ぎます。
  • 風味の付与:バターの芳醇でミルキーな風味が、サゴシの上品な味わいをリッチに引き立て、満足感を高めます。
  • 食感の向上:表面の小麦粉がバターを吸ってカリッと香ばしく焼き上がり、中のふっくらとした身との食感のコントラストが楽しめます。

プロの味に近づけるムニエルのアレンジ術

焼き上がったサゴシを取り出した後のフライパンは、旨味の宝庫です。そこへ白ワインを加えてアルコールを飛ばし、レモン汁や醤油、刻んだパセリなどを加えて軽く煮詰めれば、本格的なソースが簡単に作れます。このソースをかければ、お店のような一皿に。

また、トマトソースやきのこのクリームソースとの相性も抜群です。旬の野菜(アスパラやパプリカなど)と一緒にソテーするのも彩り豊かでおすすめです。

サゴシは脂肪分が少ないため、フライやソテー、オイル煮(アヒージョ)のように良質な油を補いながら調理する手法に非常に適しています。いつもの和食に少し変化をつけたい時、ぜひこの絶品ムニエルをお試しください。サゴシのポテンシャルの高さに、きっと驚かされるはずです。

野締めでも朝獲れなら最高の味に

これまで、サゴシを最高の状態で味わうためには、釣り場での「活け締め」と迅速な下処理がいかに重要であるかを繰り返し解説してきました。確かに、これが最も理想的な品質管理の方法であることは紛れもない事実です。

しかし、「釣り場で血抜きや内臓処理をするのは、道具も場所もなくて難しい」と感じる方や、そもそも釣りをせずスーパーマーケットなどでサゴシを購入する方も多いでしょう。では、活け締めされていない、いわゆる「野締め(釣り上げた後、または水揚げ後に自然死したもの)」のサゴシは、やはりまずいのでしょうか。

結論から申し上げますと、野締めであっても、鮮度が極めて良好であれば十分に美味しく食べることが可能です。特に、その日の早朝に水揚げされ、すぐに店頭に並んだ「朝獲れ」のサゴシであれば、適切に活け締めされたものと遜色ない素晴らしい味わいであることも少なくありません。

スーパーで一尾丸ごと売られているサゴシを選ぶ際には、プロが実践する鮮度の見極め方を覚えておくと便利です。以下のポイントをしっかりチェックして、最高の個体を選びましょう。

鮮魚店直伝!新鮮なサゴシの見分け方

  • 目:まず一番に確認すべきは目です。黒目が澄んでいて、水晶体が透明で盛り上がっているものが新鮮な証拠。白く濁っていたり、目が落ち窪んでいるものは鮮度が落ちています。
  • エラ:可能であればエラ蓋を少し開けて中を確認します。鮮血のような鮮やかな赤色をしていれば新鮮です。時間が経つにつれて、茶色や黒っぽい色に変色していきます。
  • 腹の硬さ:魚体を直接触れるなら、お腹の部分を軽く指で押してみてください。パンと張っていて、しっかりとした弾力と硬さがあれば鮮度が良い証拠です。内臓の自己消化が進むと、腹が柔らかくブヨブヨしてきます。
  • 体表:体表の金属的な光沢が強く、斑紋がはっきりしているものが新鮮です。また、切り身の場合は、身に透明感があり、ドリップ(赤い水分)が出ていないもの、血合いの色が黒ずんでおらず鮮やかな赤色をしているものを選びましょう。

たとえ理想的な活け締めでなくとも、鮮度の良い個体を選び、購入後は一刻も早く内臓を取り出して丁寧に下処理を施せば、気になる臭みもなく、サゴシ本来の美味しさを十分に堪能することができます。「野締めだからまずい」と短絡的に決めつけず、まずは素材そのものの鮮度を見極める眼を養うことが大切です。

結論:「サゴシ まずい」は一手間で変わる

この記事を通じて、サゴシが一部で「まずい」と評価されてしまう背景にある原因と、その評価を覆すための具体的な知識や技術について、多角的に解説してきました。最後に、サゴシを最高の食材として楽しむための要点をリスト形式でまとめます。

  • サゴシはサワラの若魚であり、成長段階で呼び名が変わる出世魚である
  • 「まずい」「臭い」という評判の最大の原因は、釣った後の締め方と血抜きの不備にある
  • 最高の味を引き出すには、脳締め、血抜き、迅速な内臓・エラ処理が不可欠
  • 体表のヌメリも臭みの原因となるため、調理前にはしっかり洗い流すことが重要
  • 旬は脂が乗って濃厚な味わいの冬と、さっぱりとして漁獲量が増える春の年2回存在する
  • 完璧に処理された新鮮なサゴシは、上品な甘みを持つ絶品の刺身になる
  • 刺身で食べるなら、皮と身の間の旨味を最大限に引き出す香ばしい「皮目の炙り」が最もおすすめ
  • 生食の際は、厚生労働省も推奨する冷凍処理(-20℃で24時間以上)が最も確実なアニサキス対策となる
  • 火を通すと身がふっくらとする特性を活かし、揚げ物や焼き物で真価を発揮する
  • 下味をしっかりつけた竜田揚げは、サゴシの美味しさを誰もが実感できる鉄板レシピ
  • 淡白な身はバターとの相性が抜群で、洋風のムニエルにすると新たな魅力を発見できる
  • 成魚のサワラに比べて脂が少なく、さっぱりとした上品な味わいがサゴシならではの個性
  • 野締めでも「朝獲れ」など極めて鮮度が良いものを選べば、十分に美味しく食べられる
  • スーパーで選ぶ際は、目、エラ、腹の硬さ、体表の光沢をチェックする
  • 正しい知識を持ち、ほんの少しの一手間をかける覚悟さえあれば、「まずい魚」は「最高の魚」に変わる

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