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ブダイはまずいし臭い?「硬い」の誤解を覆す魚屋の技で激安魚を高級魚に!

スーパーなどで見慣れない色鮮やかな魚を見かけて、ブダイはまずいし、身もウロコも硬い、さらに臭いのではないかと心配になる方も多いのではないでしょうか。

夏が旬なのか、さばき方はどうするのか、そもそもアオブダイのように毒があるのかといった理由から、食べ方を迷って購入をためらうこともあるかもしれません。

料理と魚が好きすぎて異業種から鮮魚業界に転職した私が、ブダイに関する誤解を解き明かし、家庭でできる極上の味わい方をご紹介します。

この記事で分かること

  • ブダイの味が季節や食性によって劇的に変わる生物学的な理由
  • 絶対に食べてはいけない有毒なアオブダイなど危険な魚との見分け方
  • 硬いウロコや特有の臭いを完全に消し去るための正しい下処理の手順
  • ブダイの旨味を最大限に引き出す熟成テクニックと美味しい絶品調理法

ブダイがまずい、硬い、臭いという誤解の真実

鮮やかな見た目と独特の体型から、釣り人や一般の消費者から敬遠されがちなブダイですが、実は季節や処理の仕方によって評価が180度変わる、非常にポテンシャルの高い魚ですね。ここでは、なぜネガティブなイメージを持たれがちなのか、その背景にある生態や地域の食文化について詳しく見ていきましょう。

食性の変化で夏と冬の味が違う理由

ブダイの味が「まずい」「臭い」と言われがちな一番の理由は、ズバリ季節による食性の劇的な変化にあるかなと思います。魚の味というものは、その魚が普段何を食べて生きているかによって大きく左右されるものですが、ブダイはその影響を最も強く受ける魚の一つと言えます。

夏場の暖かい時期のブダイは非常に食欲旺盛で、岩場に付着しているカニやエビなどの甲殻類、貝類、さらには石灰藻と呼ばれる硬い藻類などを、そのオウムのクチバシのように強靭な歯と顎を使ってガリガリと噛み砕いて捕食しています。このように雑食性が極めて強くなる夏場は、食べた餌の成分に由来する独特の強い磯の匂いが筋肉組織にまで移りやすいんですね。これが、夏に釣れたブダイが「磯臭くて食べられたものではない」と敬遠される最大の理由となっています。

さらに夏場は海水温が高いため、ブダイが大量に食べた海藻や底生生物が腸内で急速に発酵しやすくなります。釣り上げられた後や、スーパーの店頭に並ぶまでの間に内臓の中の餌が腐敗に近い状態になり、いざ包丁を入れてお腹を開いた瞬間に、強烈な悪臭を放つ個体が少なくないのです。このさばく際のトラウマとも言える臭いのインパクトが、「ブダイ=臭い魚」という強烈な固定観念を植え付けてしまっている側面も大きいですね。

季節主な食性身の味や匂いの傾向
夏から秋(夏ブダイ)カニ等の甲殻類、貝類、石灰藻磯の匂いが強く身に移りやすく、水っぽさもあり評価が低め
冬から春(寒ブダイ)ハバノリやワカメなど柔らかい海藻類磯の匂いがスッと消え、上質な脂が乗って極上の味わいに変化

補足知識:ブダイの歯と名前の由来

ブダイの歯は、複数の歯が癒合して鳥のクチバシのような形状になっています。これで硬いサンゴや岩をかじり取るため、非常に強力です。ちなみに名前の由来は諸説ありますが、鎧のような硬いウロコを持つことから「武士のような鯛(武鯛)」と呼ばれるようになったという説や、見た目が不格好なため「不鯛」と呼ばれたという説などがあります。

この歯、凄いですよね

冬が旬の寒ブダイは極上の白身魚

夏場は磯臭くて敬遠されがちなブダイですが、秋が深まり海水温がグッと下がる冬から春にかけての時期になると、その評価は劇的に覆ります。この時期のブダイは「寒ブダイ」と称され、主食が硬い甲殻類から、岩場に生えるハバノリやワカメといった柔らかい海藻類主体へと大きくシフトするのです。

主食が草食性に傾くことで、夏場に釣り人を悩ませていた強烈な磯の匂いや内臓の悪臭は見事に消え去ります。それと同時に、冷たい冬の海を生き抜き、春の産卵期に向けて体力を温存するために、身の内部や皮下部分にたっぷりと上質な脂を蓄え始めます。さばいてみると一目瞭然で、夏場は少し水っぽくて半透明だった身が、冬場は脂が混ざり込んでうっすらと白濁し、包丁が脂でベタつくほどになります。

この時期に獲れた鮮度の良いブダイは、マダイやイシダイといった一般的に高級魚として扱われる磯魚にも全く引けを取らない、あるいはそれ以上の極上の旨味と甘みを持つ白身魚へと変貌するんですよ。身質は熱を通すとふっくらとして身離れが良く、お刺身にすればモチモチとした食感と皮目の強い旨味が口いっぱいに広がります。一般的な知名度が低いため、スーパーなどではマダイと比べてかなりお手頃な価格で売られていることも多く、魚好きからすればこれほどコストパフォーマンスに優れた「隠れた絶品魚」は他にないのではないかと思うほどです。

和歌山や三重では高級なイガミ

全国的な知名度で見れば「外道(狙っていないのに釣れてしまう魚)」としてぞんざいに扱われることの多いブダイですが、日本の特定の地域においては、全く異なる評価と独自の食文化が根付いています。特に黒潮の恩恵を受ける和歌山県や三重県の沿岸部などでは、ブダイのことを地方名で「イガミ」と呼び、昔から非常に重宝され、愛されてきた歴史があります。

これらの地域では、イガミは決して外道などではなく、冬の磯釣りの大本命ターゲットとして多くの釣り人が専門に狙うほどの人気魚です。また、秋から冬にかけての旬の時期(主に11月〜1月頃)になると、地元のスーパーマーケットや鮮魚店の店頭の最も目立つ場所に、当たり前のように丸魚の状態でズラリと並べられます。

しかも、決して「安くて手頃な大衆魚」としてではなく、キロ単価が数千円を下らないような高級魚として立派な値段で取り引きされているから驚きです。

なぜこの地域でこれほどまでにイガミが愛されているのかというと、それは単に美味しいからというだけではなく、古くからの伝統的な調理法がこの魚のポテンシャルを極限まで引き出しているからです。イガミ特有のゼラチン質を豊富に含んだ分厚い皮と、加熱してもパサつかないふっくらとした白身は、醤油と砂糖で甘辛く炊き上げる「煮付け」という調理法と奇跡的なほどの相性の良さを見せます。この地域の人々にとって、冬の寒風が吹き始める頃に食べるイガミの煮付けは、季節の到来を告げる何よりのご馳走として深く愛されているんですね。

紀南地方のお正月を彩る祝祭魚の魅力

和歌山県の中でも、特に田辺市周辺を中心とする紀南地方においては、イガミ(ブダイ)の存在価値はさらに一段階引き上げられます。なんとこの地域では、イガミは単なる美味しい冬の味覚という枠を完全に超え、お正月や秋祭りといったハレの日(お祝い事)の食卓には絶対に欠かすことのできない「最高の祝祭魚(年取り魚)」として、揺るぎない確固たる地位を築き上げているのです。

日本全国を見渡してみても、お正月の縁起物の魚といえば、東日本の「サケ(鮭)」や西日本の「ブリ(鰤)」、あるいは「めでたい」の語呂合わせで全国的に重宝される「タイ(鯛)」が定番中の定番ですよね。しかし、この紀南地方においては「お正月にはタイよりもイガミ」と言い切る家庭が少なくありません。これは民俗学的にも非常に珍しく、興味深い独自の食文化だと言えます。

この地域を代表するハレの日の郷土料理が、伝統的な「いがみの煮付け」です。お祝い事の縁起物であるため、頭や尾を落とさずに丸ごと一匹の姿のまま調理するのが大原則。特筆すべきは、お腹を綺麗に掃除した後に、輪切りにした大根をお腹の中に詰め込み、鍋の底には焦げ付き防止と香り付けのための「竹の皮」を敷き詰めて煮立てていくという、独特すぎる調理手順です。醤油、酒、みりんに加え、たっぷりの砂糖を使って照りが出るまでこってりと煮上げます。

そして、この煮付けの最大の醍醐味は、魚が冷えた後にできる「煮こごり」にあります。イガミの皮や骨から溶け出した極上のコラーゲン(ゼラチン質)が、甘辛い煮汁と共にゼリー状に固まり、これを炊きたての熱々ご飯に乗せて、ふっくらとした白身と一緒に頬張る瞬間はまさに至福。この煮こごりの深い旨味こそが、世代を超えて紀南地方の人々を魅了し続け、イガミを特別な魚たらしめている最大の理由なんですね。

注意:猛毒を持つアオブダイ等の近縁種には絶対に手を出さない

標準和名の「ブダイ」自体は筋肉も内臓も無毒であり、安全に美味しく食べることができます。しかし、同じブダイ科に属する大型の近縁種である「アオブダイ」などは、その体内に加熱しても絶対に消えない致死性の猛毒(パリトキシン等)を蓄積している個体が存在します。また、暖かい海域の大型魚はシガテラ毒の懸念もあります。(出典:厚生労働省『自然毒のリスクプロファイル:魚類:パリトキシン様毒』

釣れた魚の尾びれが丸みを帯びておらず、全身が異様に鮮やかな青色をした見慣れない大型魚であった場合は、「絶対に持ち帰らない、食べない」という鉄則を必ず守ってください。自然毒のリスクについては自己判断は大変危険です。少しでも種類に不安がある場合は、専門知識を持つ保健所や水産試験場などの機関に必ずご相談ください。正確な情報は公式サイトをご確認いただき、最終的な判断は専門家にご相談いただくようお願いいたします。

ブダイのまずい、硬い、臭いを完全攻略する下処理と調理法

安全で美味しい旬の寒ブダイを手に入れたら、次はいよいよキッチンでの調理ですね。ここでは、ブダイの弱点とも言える内臓の独特の匂い、鎧のように分厚く硬いウロコ、そして身の余分な水っぽさを、ご家庭でも確実に実践できるプロ顔負けのテクニックで完全に打ち消し、最高のポテンシャルを引き出す方法を徹底的に解説します。

鮮度と血の処理が臭み消しの絶対条件(釣り物と野締めの違い)

どんな魚にも共通して言える魚食の基本中の基本ですが、ブダイ特有のクセを抑え込み、クリアな旨味だけを残すための第一歩は、血生臭さを徹底的に排除する「血の処理」です。

魚の血液というものは、死後非常に早いスピードで腐敗の進行を早め、身全体に生臭さ(トリメチルアミンなどの悪臭成分)を蔓延させてしまう最大の要因となります。もしご自身で釣り上げた場合は、生きているうちにエラ膜にナイフを入れて動脈を切断し、海水を張ったバケツの中でしっかりと血を抜く「活け締め(いけじめ)」が絶対に欠かせません。この一手間で、その後の食味が天と地ほど変わります。

しかし、スーパーや町の魚屋さんで激安価格で売られている丸ごとのブダイは、その安さゆえに一匹ずつ活け締めなどされておらず、網で獲れた後にそのまま氷で締められた「野締め(のじめ)」の状態であるのがほとんどです。

野締めの魚は体内に血が残っているため、購入時の鮮度の見極めと、ご家庭での丁寧な処理がより一層重要になってきます。店頭では、エラの内側を少し覗いてみて鮮やかな血の赤色をしているか(ドス黒く、茶色く変色していないか)、お腹周りを触った時に張りがあってブヨブヨしていないかなどをチェックしてください。

そして、ご家庭のキッチンでさばく際はここからが勝負です。頭を落として内臓を取り出した後、背骨の裏側に沿って赤い血の塊のような「血合い(腎臓)」がべったりと付着しています。ここに包丁でスッと切り込みを入れ、ササラや専用の歯ブラシなどを使って、流水に当てながら血合いの塊が一切残らないように完璧に洗い流すこと。野締めの激安ブダイの臭みを消し、高級魚に大化けさせるためには、この「血合いの完全除去」が最も重要なポイントになります。

確実な下処理で悪臭を放つ内臓を除去

血抜きと並んで、ブダイを調理する上で最も気を遣い、丁寧な作業が求められるのが内臓の処理です。先ほどの生態の項目でも触れたように、ブダイの腸内には未消化の海藻類や餌が大量に詰まっており、これが発酵して強烈な悪臭を放つ最大の原因となっています。

お腹に包丁を入れて開くときは、絶対に刃先を深く入れすぎないように注意してください。腸管や胃袋、そして苦玉と呼ばれる胆嚢(たんのう)を包丁で傷つけて破ってしまい、内容物が腹腔内に漏れ出してしまうと、その強烈な臭いや苦味が真っ白な身にダイレクトに移ってしまい、せっかくの美味しい魚が台無しになってしまいます。刃先を上に向けて皮だけを滑らせるように浅く切り進め、内臓の塊を包み込むようにして細心の注意を払ってそっと一塊のまま取り出すのが、プロも実践する確実な下処理のコツです。

内臓を無事に取り出し、前述の血合いを洗い流した後は、お腹の空洞の中を流水とスポンジなどを使って、汚れやぬめりが一切残らないようにピカピカに洗い上げてください。さらに、ブダイの体の表面(皮目)にも、独特の磯の匂いを持つ特有の「ぬめり」がうっすらと存在しています。ウロコを取る前、あるいは取った後に、包丁の背中や金タワシを使って、体の表面のぬめりをこすり落としながらしっかりと洗い流す工程も、臭み取りには欠かせない重要なステップかなと思います。

硬いウロコは専用ウロコ取りで安全に対処

鱗をきれいに取ったブダイ

ブダイを調理しようとした初心者が最も心が折れそうになるのが、この「ウロコ取り」の作業かもしれません。ブダイのウロコは、1枚1枚が信じられないほど大きくて分厚く、まるでプラスチックの破片か防弾チョッキのようになっています。さらに厄介なことに、一般的な魚のように皮の上に乗っているというよりは、分厚い皮の繊維と一体化しているかのようにガッチリと根付いているため、100円ショップなどで売っている簡易的なウロコ取り器で軽く擦った程度では、なかなか剥がれてくれません。

ヒラメやハタなどの大型魚の場合は、包丁を使ってウロコを皮ごと薄く削ぎ落とす「すき引き」という和食の高度な技法を用いることが多いですが、ブダイの場合は皮自体が非常に分厚く硬いため、不慣れな方がすき引きをやろうとすると包丁が滑って怪我をするリスクが高く、あまりおすすめできません。

そこでご家庭で最もおすすめなのが、真鍮(しんちゅう)などで作られた強靭で重量のある「専用のウロコ取り器」を使い、力技で剥がしていく方法です。ただし、そのままキッチンで力を込めてガリガリとやると、硬くて大きなウロコが部屋中の壁や天井にまで飛び散り、後片付けが地獄のような大惨事になってしまいます。

これを防ぐための裏技として、大きくて厚手の透明なゴミ袋(45リットルなど)を用意し、まな板ごと、あるいは魚体と手だけを袋の中に入れて、袋の中で力を込めてウロコを引くのが一番安全で確実です。これなら、どんなにウロコが飛散しても袋の中に収まるので、ストレスなく力強くウロコ取りに専念できますよ。

水分が気になる場合はペーパーとラップによる熟成で旨味凝縮

ウロコと内臓、血合いを完璧に取り除いて三枚におろしたら、いよいよ食べる準備ですが、ここですぐに刺身にしてはいけません。ブダイは本来、筋肉組織内に水分を非常に多く含んでいる魚です。釣りたて、さばきたての新鮮な状態であっても、そのまま食べると水っぽさが前面に出てしまい、せっかくの旨味がぼやけて「まずい」「味が薄い」と感じられてしまう大きな要因となります。これを劇的に美味しく、極上の白身へと変貌させる魔法の工程が「熟成」です。

ブダイの旨味を引き出す究極の熟成ステップ

  • すべての水洗いを終えた後、身の表面はもちろん、お腹の内側の空洞部分に至るまで、キッチンペーパーで微細な水滴すら残さないように徹底的に拭き取ります。(水分は雑菌繁殖と臭みの原因になります)
  • 水気を拭き取った身を、魚専用の吸水紙(リードクッキングペーパーなどで代用可)で隙間なくピッチリと包み込みます。
  • 空気に触れて脂が酸化するのを防ぐため、上からラップでグルグル巻きにして厳重に密閉状態を作ります。
  • そのまま冷蔵庫のチルド室(可能であれば氷温帯に近い場所)に入れ、最低でも半日、できれば1日〜2日程度じっくりと寝かせます。

この熟成の手順を踏むことで、身の中の余分な水分がペーパーに吸い取られて適度に抜け落ちます。それと同時に、死後硬直が解ける過程で筋肉内のATPという成分が酵素によって分解され、イノシン酸などの強烈な「旨味成分」へと変化し、身の中にギュッと凝縮されるのです。熟成を終えたブダイの身は、水っぽさが完全に消え去り、白濁してしっとり、モチモチとした極上の食感へと仕上がりますよ。

磯の風味を消すアクアパッツァの魔法

熟成させたブダイは和食でも十分に美味しいのですが、もし「夏から秋にかけて獲れた個体で、まだ少し磯の香りが残っているかもしれない」と不安に感じる場合は、洋風の調理技法を取り入れるのが圧倒的な大正解となります。中でも私が強くおすすめしたいのが、イタリア料理の定番である「アクアパッツァ」ですね。

アクアパッツァの調理科学は、ブダイの欠点を隠し、長所を引き出すために完璧に理にかなっています。まず、フライパンに多めのオリーブオイルと潰したニンニクを熱し、下処理を終えたブダイの切り身の皮目をカリッと香ばしく焼き上げます。この時、ニンニクに含まれるアリシンという成分の強烈な香りと、エキストラバージンオリーブオイルの豊かな風味が、魚特有の磯のクセを完全にマスキング(覆い隠す)してくれます。

さらに焼き目をつけた後、アサリやミニトマト、ケイパー、そして白ワインを加えてアルコールを飛ばし、水を加えて蓋をして蒸し焼きにしていきます。ここからが最大のポイントとなる「乳化(にゅうか)」のプロセスです。魚に火が通ったら蓋を開け、火を少し強めて、スプーンで煮汁をすくっては魚にバシャバシャと何度も回しかけながら煮詰めていきます。

水分の多い煮汁とオリーブオイルが激しく混ざり合うことで乳化現象が起こり、透明だったスープが白濁して、トロッとした濃厚な極上のソースへと変化します。この旨味が凝縮された乳化ソースが、ブダイのふっくらとした淡白な白身にしっかりと絡みつき、アサリのコハク酸との相乗効果も相まって、高級レストラン顔負けの素晴らしい一皿が完成するのです。

朝どれの弾力を味わう「薄造り」と、皮目を堪能する「焼霜造り」

冬に獲れた最高品質の寒ブダイ。しっかり下処理をして、いざ「お刺身」でその真価を味わおうとする際、絶対に知っておいていただきたい注意点があります。それは、ブダイ特有の「強靭な身の硬さ」です。

特に産直市場などで朝どれの新鮮なものを買った場合、普通のお刺身のように分厚く切ってしまうと、ゴムのように硬くてなかなか噛み切れない…という失敗に陥りがちです。そこで私が一番におすすめしたいのが、フグのお刺身のように薄く切る「薄造り(うすづくり)」です。

強靭な身の硬さを逆手に取り、薄くそぎ切りにすることで、厄介だった硬さが「心地よくて極上のシコシコとした歯ごたえ」に大化けします。これにたっぷりのもみじおろしを添えて、ポン酢でさっぱりといただけば、もう他のお刺身では物足りなくなるほどの絶品ですよ!

一方で、冬の脂が身にしっかりと回っていて、冷蔵庫で寝かせたことで「もっちり」とした食感に変化したブダイであれば、皮付きのまま味わう和食の伝統技法「焼霜造り(やきしもづくり)」や「湯霜造り(ゆしもづくり)」にするのも大いにアリです。

ブダイは、分厚い皮とその直下にある皮下脂肪の層に、最も強烈な甘みと旨味が詰まっています。ガスバーナーで皮目を「ゴォーッ」と香ばしく焦げ目がつくまで炙ったり(焼霜造り)、熱湯をサッと皮にかけて氷水で締めたり(湯霜造り)することで、熱の力で硬い皮が柔らかくなり、溶け出した極上の脂を堪能できます。

鮮度抜群で硬い時は「薄造り」でポン酢と合わせ、脂が乗ってもっちりしてきたら「皮ごと炙る」。この使い分けを知っているだけで、ブダイという魚の楽しみ方は何倍にも広がりますよ。

サカシュン流のアレンジ:低温フライと特製タルタル

さらにおまけのアレンジレシピとして、お刺身を引いた際に出る端っこの切れ端や、少し見栄えの悪い部分の活用法をご紹介します。我が家は家族揃って大の卵好きなので、ブダイの切れ端を一口大に切り、自家製のゆで卵をたっぷり入れた濃厚なタルタルソースと合わせて「白身魚のフライ」にするのが定番中の定番です。揚げる時のポイントは、我が家流ですが140〜160℃くらいの低温の油でじっくりと時間をかけて揚げること。こうすることで、水分の多いブダイの身のタンパク質が急激に収縮して硬くなるのを防ぎ、信じられないほどふっくら、フワフワの食感に仕上がって絶品なんですよ!

絶品ブダイでまずい、硬い、臭いを克服

いかがでしたでしょうか。今回は、ブダイがまずい、硬い、臭いと誤解されてしまう生物学的な理由から、それを覆す和歌山の素晴らしい食文化、そしてご家庭で実践できるプロの究極の調理法までをたっぷりとご紹介しました。

確かに、強烈に硬いウロコを取ったり、内臓を傷つけないように慎重に処理したりと、他の魚に比べれば下処理に少し手間がかかる魚であることは間違いありません。しかし、冬の旬の時期(寒ブダイ)を選び、釣った直後の血抜きや完璧な内臓の処理、そしてペーパーとラップを使った熟成といった正しいステップを踏むことさえできれば、高級魚であるマダイやイシダイにも全く負けない、とてつもないポテンシャルを秘めた極上の白身魚へと大化けするのです。

もしスーパーの鮮魚コーナーや地元の魚屋さんで、色鮮やかで少し不格好なブダイが安く売られているのを見つけたら、「ブダイはまずいの?硬いって聞くし臭いの?」というネット上のネガティブな噂や先入観だけで敬遠せずに、ぜひ一度カゴに入れてみてください。そして、今回ご紹介した下処理と調理法を試していただければ、きっとその美味しさに驚愕し、ご自宅の食卓が特別で豊かなものになるはずです!

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